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■第7節 長弓兵と弩兵 |
TL3の中世時代における個人携帯可能な遠距離武器というと、弓矢(ボウ)と弩(クロスボウ)の二つが代表的である。実際の戦争においては、腕力に依存せず、誰でも簡単に扱えるので訓練期間が短く済み、しかも威力の高いクロスボウがよく用いられた。 |
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たがイギリスでは、富裕層の農民と没落した貴族の間を埋める独立自営農民(ヨーマン)によって、大々的にロング・ボウ(長弓)が用いられ、「百年戦争」では当時主力だったクロスボウ部隊をも上回る大活躍をした。 またモンゴルでは、馬上でクロスボウの再装填は困難な事から、サイズの小さいショート・ボウやコンポジット・ボウによる馬上射撃が行われ、主に敵軍の補給部隊を攻撃して敵の侵攻を中断させるゲリラ戦術が行われた。 さらに、非常に稀な例ではあるが、日本の「武士」は重装騎兵でありながら馬上でロング・ボウを引き、戦場では一騎当千の活躍を見せた。 この二つの武器に関して、必ず議論されるのが「ロング・ボウとクロスボウ、どっちが強いのか?」であり、この議論でよく引き合いに出されるのが、中世の「百年戦争」時に行われた「クレシーの戦い」(西暦1346年8月26日)である。 この項目では、クレシーの戦いを参考にしつつ、ガープスのルール下における「ロング・ボウとクロスボウの性能」を検証していこうと思う。 |
■状況 |
以下のような状況において、ロング・ボウとクロスボウの性能を検証する。 |
●射撃戦 クレシーの戦いでは、フランス軍のジェノバ人傭兵部隊の弩兵と、イングランド軍の独立自営農民(ヨーマン)から成る長弓兵が射撃戦を展開。速射性で勝るイングランドの長弓兵が、フランス軍の弩兵を撃退したとされる。 なのでここでは、間に障害地形があり、射撃戦しか行えない状態での検証とする。 なお、クレシーの戦いで15回ほど行われたフランス騎士の突撃は、今回の検証とは直接関係ないので省略する。 ●対等な条件 いくつかの記録から、クレシーの戦いにおける実際のユニット配置を見てみると、最初の布陣の段階でイングランド軍の方が圧倒的に優勢であったと思われる。 イングランド軍の長弓兵は高台を陣取り、間に落とし穴と「槍の壁」を形成する杭が立てられ、フランス騎兵が突撃できない位置から射撃を行っていた。 |
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対するフランス軍の弩兵は、3倍の兵力を抱えていた事と、さらにイングランド軍の騎士たちが下馬して長槍兵になっていた事から、何の変哲もない平野で、高台の敵相手に「打ち上げ」の状態での射撃戦を命令された。 可哀そうな事に、ジェノバ傭兵たちは戦場までの強行軍で疲れているのにも関わらず、フランス騎士たちの自己中な決断のために、到着早々、休憩もなしで前線に投入された。 さらに悲惨な事に、射撃戦で用いる遮蔽用のラージシールドがなかったため(シールドは輸送隊が別途で輸送しており、まだ到着してなかった)、かなり不利な状況での戦闘を強いられたと思われる。 オマケに信じがたい事だが、射撃戦でボロ負けした弩兵に怒り狂ったフランス騎士たちは、突撃の際に味方であるはずの弩兵を踏み付けながら駆逐したという。 このあまりに酷い仕打ちから分かるように、当時のフランス軍はただの烏合の衆であり、騎士が集まって突撃するくらいしか能がなかった。これは、弓矢と弩の優位性を語る以前の問題である。 しかし今回は「検証」であるので、対等の条件でやらねば意味がない。そこで今回は、開けた場所の同じ高さでの撃ち合いとし、両者ともに消耗していない万全の態勢からの開戦とする。 当時の射撃武器の有効射程は、武器の使用者の技量に頼る部分が大きかったため、武器種に関係なく40~50メートルほどだったとされる。そのため、今回は「相対距離45メートルの状態での撃ち合い」とする(距離修正-8) また、射撃戦が想定される環境では、遮蔽物を用意して身を護るのが当然の戦術と思われるので、お互いに「薄い遮蔽物」の後ろにいるとして、距離修正に加えて遮蔽物による修正(-2)が課されるものとする。 以上より、互いに距離修正-10の状態での撃ち合いとなる。 |
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●クロスボウの種類 クロスボウと一言で言ってみても、装填方式によって発射速度は大きく異なる。 ガープスでは、クロスボウ自体に「体力」が設定されていて、その強さと使用者側の体力に応じて「弦を張る」準備行動の必要ターン数が変動する。 自分の体力と同じ以下のクロスボウであれば、弦を張る行動は2秒で済むので、ロングボウの発射速度とあまり変わらなかったりする。ただし威力の方も、弓矢とあまり変わらない。 一方で、自分の体力より高い体力のクロスボウは、準備時間が増えたり、弦引き用の「ヤギの足」を使わないと準備できなくなっている。準備時間が増える代わりに、弓矢では出せない高威力を出すことができるようになる。 |
「クレシーの戦い」の文献はネット上にいくつかあり、文献によって数値データに差があるのだが、Wikipediaの記述によると「1分間に1、2発程度しか発射できないクロスボウと、1分間に6~10発と速射性能で大きくまさるロングボウとの差は明白で、クロスボウ部隊は散々に打ち負かされた」とある。 この記述内容を鵜呑みにするのであれば、この戦いで使用されたクロスボウはおそらく「ウインドラス・クロスボウ」であり、巻き上げ動作にかなり時間がかかったと思われる。 そこで今回は、この設定を組んで「使用者より3~4高い体力のクロスボウ」を扱う。弦張り作業には「ヤギの足」が必要で、完了まで20秒かかる(当サイトの改変ルール下では「ウインドラス・クロスボウ」はペローマ信者専用神殿武器扱いなので、一般兵士は使えないという事情による)。 |
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また上の画像にあるように、当時の弩兵は装填中の無防備状態をフォローするためにラージシールドを置き、その後ろで装填作業を行っていたようである。 ガープスにおける検証でもこの設定を汲み、シールドによる遮蔽物の後ろで装填作業を行う(置き盾を「薄い遮蔽物」と見なす)。 |
■対策 |
以上の「状況」から、実際の運用を考案する。 |
1.特殊ルールの運用 中世レベルの射撃は、数ターンに1射というのが当たり前の、非常に射撃速度の低い環境であるため、射手の戦闘ターンは「10ターンを連続して行う」方式を採用する。 これを互いに繰り返し、最終的に半数がやられた側が逃走状態となり、敗北とする。 なお、射手たちは生命力分のダメージを受けた時点で戦意喪失し、気絶判定の成否にかかわらず戦線から離脱するものとする(撃破扱い)。 2.〈準備/矢〉は取らない 射撃の回転率を上げるのに必須の〈準備/矢〉技能だが、今回は10名以上の兵士同士が撃ち合う環境であり、個々の射手の判定の成否で行動がズレるのは管理が面倒だし、実際問題として一斉射撃する上でも問題が多い。 なので今回は準備技能は使わず、判定不要で確実に1秒かけて準備してもらう安全策を採る。 3.魔法のレザー・アーマー 当時の歩兵を描いたと思われるイラストでは、歩兵たちはチェイン・メイルを着用しているように見える。確かに魔法が存在しない世界においては、「財産/標準」の範疇で装備を整えるのであれば、最強の鎧はチェイン・メイルになるだろう。 しかしルナル世界は、防具魔化が普通に行われている環境であるため、今回は「防具魔化が施されたヘビー・レザー」を着用する。 |
■サンプル・キャラクター |
今回、弓兵部隊を率いるために作成されたキャラクターは以下である。 |
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【基本設定】 ルシア・ライトグレースは、リアド大陸中央部サイスの森・レスティリ氏族「ライトグレース」(光の恩恵)出身の女性エルファの射手です。人一倍好奇心が強く、森の中での平穏な生活に退屈していた彼女は、修行して〈導き手〉になった後、外交任務として大陸中を旅するようになりました。 彼女の森の外での任務は、「はぐれ者になったエルファに新たな〈円環〉を紹介する」という、〈導き手〉の基本的な仕事です。実際のところ、〈円環〉からはぐれたエルファが別の〈円環〉でやり直せる事はあまりないので(はぐれる理由は大抵、本人が〈円環〉システムそのものに適応できないことが多いため)、任務にかこつけて冒険を楽しんでいるというのが実態です。彼女自身も〈導き手〉でなければ、同じようにはぐれ者になっていたのかもしれません。 射手としての実力が高く、呪文と組み合わせて超遠距離からの狙撃を得意としています。指揮能力もあることから、射手の傭兵として雇われ、旅費稼ぎをすることもあります。 【設計思想】 弓矢の最大致傷力は2D(1D+4)です(これは弾丸のサイズと飛翔速度の限界によるものです)。この最大威力を確保しつつ、《鷹目》の呪文で武器の最大有効射程まで命中が狙える射撃が行える完全射撃特化キャラクターとして設計されました。 体力11の射手が、最高の性能を持つコンポジット・ボウで《鋭さ》1レベルの矢を撃った場合、致傷力は1D+3になりますが、さらに改変ルールのレスティリ氏族特殊呪文《弾丸硬化》で矢の威力を+1することで、弓矢最大の致傷力2Dを実現できます。彼女は昼間の活動中、矢筒一つ分の魔法の矢(10発)にこの呪文をかけ、維持し続けています(熟練により維持コストはゼロ)。 また、《鷹目》の呪文の影響下では、射撃の距離修正を求める際、距離を100分の1で計算できますので、最大望遠距離の「10メートル」扱い(距離修正-4)で射撃が行えます(この辺りのルールは「マジック完訳版」p79に掲載されています。旧マジックでは最大望遠距離(10m)の記述が抜けているので注意)。 中世の射撃武器の有効射程は、高出力のクロスボウでも300メートルあたりが限界なので、どの射撃専用武器でも、一律「-4修正」で射撃が行えます(距離50mでも300mでも100倍望遠(距離100分の1扱い)で一律「10m以下」になってしまうためです。実際のところ、中世レベルの世界において《鷹目》の呪文の望遠率は出力過剰です)。 なお、近接戦闘に挑まれた場合は《化身》の呪文で対処しますが、可能な限り白兵戦は避けた方が良いでしょう。 キャラクターの元ネタは、カプコンのコンシューマ・ゲーム「D&DRコレクション」に登場したエルフの魔法戦士「ルシア・ルグラース」です。 |
■実戦 |
リアド大陸中央部――― 建国帝ライテロッヒ・ジェムが1代で築き上げたトルアドネス帝国は、旧ザノン王国滅亡後も拡張を続け、周辺の諸国を飲み込んだ。 帝国に滅亡させられた諸国の1つ、海洋国家ペテルギュアは、現在ではペテル公国と改名されて帝国の一部となっているが、現在もなお旧王国の残党が反抗活動を続けていた。 |
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ペテル公国の首都ペテル=トルアは、帝国経済の中心地であり、それは海洋貿易によって支えられている。 ところが帝国では赤の月信仰が禁じられているため、主に船乗りたちが崇めるリャノ信仰を大っぴらに行う事ができず、ペテルギュア滅亡の際、大半のリャノ神官が国外に脱出してしまった。これにより、腕利きの船乗りや名高い料理人などの貴重な人材が失われた。 帝国は当初、海神リャノの代わりに天候を司るサリカ信仰を船乗りや料理人たちに勧めたものの、そもそもサリカのお堅い教義は彼らの柔軟な気質に全く合わず、人材の国外流出が止まらなかった。 結局、人間のリャノとアルリアナの信仰に関しては、帝国もさすがに妥協したようで、「表向きはサリカ信者として扱うが、裏でナニを信仰していても政府は感知しない」事が暗黙の了解となった。 だがそれは同時に、旧ペテルギュアの残党の活動も許す事となった――― |
深夜、ペテル=トルア郊外――― |
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通常であれば、こんな時間帯に帝国軍の輸送馬車が、明かりも灯さずに運航することはない。だが、ここ数か月、陸路を行く軍の輸送隊が集中的に狙われ、襲撃されていた。相手は手練れのゲリラ部隊であり、物資輸送は滞っていた。 帝国軍は、民間の行商を装って最小の護衛だけを伴い、夜の間に物資を運ぼうとしていたのだが。 |
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その行動は、事前に漏れていたようだ――― 彼らは旧ペテルギュアの残党。自前の船を持ち、漁業を営んでいた富裕層の者たちで、漁師と貧乏貴族の間を埋める階級とされる独立自営漁民――通称「シーマン」である。 それを率いているのは、対帝国同盟繋がりでサイスの森から派遣されたエルファの女性のようだ――― |
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帝国兵 『ぐはっ―――!!』 『てっ…敵襲………だとっ!?』 ロング・ボウから放たれた矢は、次々と御者や護衛の騎兵に突き刺さり、瞬時に制圧されてしまいました。 旧ペテルギュア王国時代のシーマンたちは、ヒマを見つけては弓矢を「娯楽」として興じ、漁に出れない時期は、その腕前を利用して傭兵になって稼ぐといった生活サイクルを送っていました。つまり彼らは、優秀なロングボウ・マン(長弓兵)です。 |
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ルシア 『―――攻撃、止め。』 動ける御者と護衛兵士はいなくなり、後は後続の幌馬車に乗っている民間人の乗客だけ。一旦射撃を停止し、様子を伺います。 |
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乗客は恐怖に駆られているのか、なかなか出てきません。しかし、乗客に私服の兵士が混じってないとも限らないので、注意深く待ちます。無論、民間人を殺傷する予定はありませんが。 と、その時――― |
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メイドの群れ 『生者のために施しを――― 死者のために花束を―――』 |
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なんという事でしょう。 クロスボウで武装した乗客たちが、青の月への祈りを唱えつつ、規則正しく列を成しながら下りてくるではありませんか。 |
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『信念のために弓を持ち――― 悪漢どもには死の制裁を―――』 |
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『しかして我ら 聖者の列に加わらん 女神サリカの名に誓い 全ての不義に鉄槌を―――』 彼女たちは、ただの乗客ではありませんでした。 帝国内のドワーフ自治領「ハン王国」に住む人間の農家の娘たちで構成された傭兵部隊であり、帝国内では「戦列メイド兵」という通称で知られています。 ドワーフ社会は女系であり、女性の方が発言力が強く、その文化は公国に住む人間の精神文化にまで影響を及ぼしており、人間の女性も腕力を鍛え、戦いを重視する傾向にあるようです。 戦列メイド兵部隊を構成するのは、人間の小作農一家の二女や三女たちのうち、腕力や体力に自信があり、戦いの得意な者たち。雇用者である地主の畑が休耕地になっている期間、出稼ぎのために帝国軍専門の傭兵として一時雇用されています。 一見すると戦闘には不向きのメイドの恰好をしていますが、その衣装の裏地は硬質のハード・レザーで補強され、さらに防具魔化でコーティングされています。そして彼女たちは、正規のクロスボウの訓練も受けています。 帝国の誇る「盾持つ乙女」たちが大盾でバリケードを築き、立ちはだかりました。 |
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メイド長 『―――お初にお目にかかります。 私は、この部隊を統括するメイド長「まほろ」と申します。 以後、お見知りおきを。 ―――早速ですが、提案があります。 今は、部隊をお引きになっていただけませんか? あなた方の活躍は、私も耳にしております。 元は、旧ペテルギュア王国の漁師の方々とか。 現在この地は帝国領となっており、あなた方はそこの領民です。 信仰に関して、やや不自由なのは承知しておりますし、 それに関して私たちもあまり干渉しないことは、 既に承知されているはず。 私たち、そして貴方たちにとっても、 この戦いは命を懸ける理由に乏しいのではないでしょうか。』 |
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ルシア 『………。』 ゲリラ活動をしているシーマンたちは、今さらペテルギュアの復興など考えていません。ペテルギュアの王族の生き残りは、帝国から遠く離れたグラダス半島「鬼面都市バドッカ」に亡命しており、王権放棄を宣言しているからです(小説「ルナル・ジェネレーション」第1巻参照)。 シーマンたちのゲリラ活動の目的は、陸上通路を集中的に襲撃して遮断する事で海路の重要性を引き上げ、帝国領内でのリャノ信仰、可能であれば赤の月の全ての神々を公に信仰する権利を取り戻す事です。 現状のペテル公国は、船乗りたちが心のよりどころとするリャノ信仰を暗黙で認めており、帝国内においてこの公国のみ、異端審問官が入れない事になっています(公王ウォルフィリー・ベイトが、内政干渉禁止を理由に立ち入りを禁じています)。 ならば暗黙と言わず、堂々と赤の月信仰を認め、さらには他の月の種族の出入りも自由にしてほしいと主張して活動しているのです。それがかなうのであれば、失った王国の事は忘れ、帝国の統治を受け入れるとも。 …エルファの射手ルシア・ライトグレースは、相手が長々と説教に入っている間、戦うべきか引くべきかの判断を考えていました。 彼女は対帝国同盟によって南のサイスの森から派遣された支援要員であり、弓の腕前が最も優れている上に指揮官としての能力も持ち合わせていたため、現地徴用されただけの臨時指揮官です。そのため、帝国と勝手に交渉する権限など、元より持ち合わせていません。 なので、まほろと名乗るメイド長の説得など、聞いても全くの無駄なのですが、時間稼ぎになるので勝手にしゃべらせています。 |
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メイド長まほろ 『―――お返事を頂けないのを見るに、 交渉は決裂という事でよろしいでしょうか? それとも、交渉権を持つ方が いらっしゃらないのでしょうか…? …いずれにせよ、 あなた方もあなた方なりの信念に従って 行動している事は存じております。 ゆえに、説得が不可能とあらば、 実力で決着をつけるしかないでしょう。 あなた方のご武運を祈ります―――』 |
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『―――構え!弓! 帝国に仇を為す者たちに、 ガヤンの裁きの鉄槌をっ!!』 |
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ルシアは「弓矢の方が回転率が良い」と判断し、撤退せず交戦を選びました。帝国VS反乱軍の戦いが始まります。 |
●戦闘開始 | |
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旧ペテルギュア王国残党のゲリラ部隊「独立自営漁民シーマン」(長弓兵30名/25cp)と、トルアドネス帝国軍・期間動員兵部隊「戦列メイド兵」(戦列弩兵30名/25cp)が戦闘を開始します。 初期配置は、互いに45メートル離れた位置の地上にいます(射撃距離修正-8)。また、互いに「薄い遮蔽物」の後ろにおり、射撃に-2修正が加わります(合計で-10修正)。 |
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今回の戦闘は、10人ずつ1フェイズ(10秒)交代で簡易戦闘で処理します。ちなみに、それぞれの行動は以下のようになります。 【シーマン側】 (1フェイズ間の行動一覧) ●「矢の準備」→「矢の装填」→「狙い」→「狙い」→「狙い」→「狙い」→「射撃」(7ターン/精度+7) 〈弓矢〉技能は14レベル、致傷力は「刺し1D+1」です。4ターンかけて「狙い」をつけ、合計+7の修正を得て目標値10で射撃を行います。残り3秒は予備動作(味方間のちょっとした移動など)として空けておきます。 この行動を毎フェイズ繰り返します。 【戦列メイド兵側】 (1フェイズ間の行動一覧) ●「巻き上げ」(10ターン) ●「巻き上げ」(10ターン) ●「矢の準備」→「矢の装填」→「狙い」→「狙い」→「狙い」→「狙い」→「射撃」(7ターン/精度+7) 最初の2フェイズは、ヤギの足を使ってクロスボウの巻き上げを行います。3フェイズ目に射撃を行います。〈弩〉技能は15レベル、致傷力は「刺し2D+1」、射撃時の目標値12です。シーマンたちと同じく、3フェイズ目の残り3秒は予備動作を行ったとして空けておきます。 つまり、3フェイズに1回射撃を行うことになります。 まとめると、戦列メイド兵が目標値12で1回射撃を行う間に、シーマンたちが目標値10で3回射撃を行う事になります。 果たして、どちらが有利でしょうか。 |
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最初は、上翼部隊同士の撃ち合いを処理します。 ■第1フェイズ Maid ■■■■■■■■■■ Seaman ■■■■■■■■■■ シーマン先行で一斉射撃。 メイド兵1名に命中し、8ダメージ。 メイド兵は巻き上げ作業でフェイズ終了。 ■第2フェイズ Maid ■■■■■■■■■■ Seaman ■■■■■■■■■■ シーマンの一斉射撃。 メイド兵7名に命中するが、2名に「よけ」られる。メイド兵5名に0~6のダメージ。 メイド兵は巻き上げ作業を完了する。 ■第3フェイズ Maid ■■■■■■■■■□ Seaman ■■■■□□□□□□ メイド兵4名に命中。うち2名に4~8ダメージを与え、メイド兵1名を撃破。 反撃でメイド兵の一斉射撃。 シーマン9名に命中し、1名に「よけ」られる。ダメージは分散し、軽傷の者は2ダメージで済んだが、6名が一撃で生命力を超える10ダメージ以上の負傷を負い、シーマン6名を撃破。 これにより、シーマンは半数を失い強制撤退。 |
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戦列メイド兵側の勝利です。 | |
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次に、中央部隊同士の撃ち合いを処理します。 ■第1フェイズ Maid ■■■■■■■■■■ Seaman ■■■■■■■■■■ シーマン先行で一斉射撃。 メイド兵5名に命中するも、1名に「よけ」られる。メイド兵3名に2~6ダメージ。 メイド兵は巻き上げ作業でフェイズ終了。 ■第2フェイズ Maid ■■■■■■■■■■ Seaman ■■■■■■■■■■ シーマンの一斉射撃。 メイド兵6名に命中し、4名に4~8のダメージ。 メイド兵は巻き上げ作業を完了する。 ■第3フェイズ Maid ■■■■■■■■■■ Seaman ■■■■■■□□□□ シーマンの一斉射撃。 メイド兵2名に命中し、うち1名に4ダメージ。まだメイド兵に脱落者なし。 反撃でメイド兵の一斉射撃。 シーマン8名に命中し、うち3名に「よけ」られる。ダメージは1名を除き、生命力に等しい10点以上をマークし、シーマン4名が脱落。 まだ半数撃退ではないため戦闘継続。 |
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■第4フェイズ Maid ■■■■■■■■■■ Seaman ■■■■■■□□□□ シーマンの一斉射撃。 メイド兵3名に命中し、うち1名が回避。メイド兵2名に4~8ダメージ。 メイド兵は巻き上げ作業でターン終了。 ■第5フェイズ Maid ■■■■■■■■■□ Seaman ■■■■■■□□□□ シーマンの一斉射撃。 メイド兵4名に命中し、うちメイド兵2名に6ダメージ。メイド兵1名を撃破。 メイド兵は巻き上げ作業を完了する。 ■第6フェイズ Maid ■■■■■■■■□□ Seaman ■■■■□□□□□□ シーマンの一斉射撃。 メイド兵2名に命中し、うちメイド兵1名に6ダメージ。メイド兵1名を撃破。 反撃でメイド兵の一斉射撃。 シーマン5名に命中し、うち2名に一撃で致命傷を与え、シーマン2名撃破。残りの者にも2~8ダメージ。 これによりシーマンは半数を失い、戦線を撤退。 戦列メイド兵側の勝利です。 |
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最後に、下翼部隊同士の撃ち合いを処理します。 ■第1フェイズ Maid ■■■■■■■■■■ Seaman ■■■■■■■■■■ シーマン先行で一斉射撃。 メイド兵6名に命中するも、1名に「よけ」られる。メイド兵5名に2~8ダメージ。 メイド兵は巻き上げ作業でフェイズ終了。 ■第2フェイズ Maid ■■■■■■■■■□ Seaman ■■■■■■■■■■ シーマンの一斉射撃。 メイド兵4名に命中するも、1名に「よけ」られる。1名に6ダメージを与えて撃破。 メイド兵は巻き上げ作業を完了する。 ■第3フェイズ Maid ■■■■■■■■■□ Seaman ■■■■■■■■□□ シーマンの一斉射撃。 メイド兵5名に命中し、うち2名に4~6ダメージ。 反撃でメイド兵の一斉射撃。 シーマン7名に命中するも、うち3名に「よけ」られる。シーマン2名に14~16の致命傷を与えて撃破するも、残り2名は軽傷で済む。 まだ半数撃退ではないため戦闘継続。 |
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■第4フェイズ Maid ■■■■■■■□□□ Seaman ■■■■■■■■□□ シーマンの一斉射撃。 メイド兵4名に命中し、2名に6~8ダメージ与えて撃破。 メイド兵は巻き上げ作業でターン終了。 ■第5フェイズ Maid ■■■■■■□□□□ Seaman ■■■■■■■■□□ シーマンの一斉射撃。 メイド兵3名に命中し、うちメイド兵2名に2~8ダメージ。メイド兵1名を撃破。 メイド兵は巻き上げ作業を完了する。 ■第6フェイズ Maid ■■■■■□□□□□ Seaman ■■■■■■■■□□ シーマンの一斉射撃。 メイド兵5名に命中し、うちメイド兵3名に4~8ダメージ。メイド兵1名を撃破。 この時点でメイド兵は半数を切ったため、反撃は行わず速やかに撤収。 シーマン側の勝利です。 |
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ルシア 『総員っ―――退却!』 シーマン 『撤退だっ!』 『みんな、引くぞ!』 『負傷者の救助を忘れるな!』 勝負の結果、2対1でシーマンたちが敗北です。ルシアは撤退命令を出し、シーマンたちは戦場を離れます。だが、しかし…? |
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一体何を考えているのか。 メイド長が単独で追撃してきました。そりゃ確かに、民間動員兵のメイドたちは射撃以外の能力がなく、クロスボウの巻き上げ時間がかかり過ぎて追撃するのは現実的ではないのは事実ですが、いくら何でも無謀な感じです。 これに対し、実質指揮をしていただけで元気なルシアが足止めを引き受け、味方の撤退を支援します。 |
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●戦闘再開 | |
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ゲリラ部隊臨時指揮官ルシア・ライトグレース(100cp)と、戦列メイド兵指揮官「まほろ」(100cp)が戦闘を開始します。 初期配置は、互いに100メートル離れた位置の地上にいます(射撃距離修正-10)。 |
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機動性の高いルシアが先行で第1フェイズ開始。 ルシアは1~2ターンで《鷹目》の呪文の集中を行い、3ターン目の冒頭に発動。そのまま〈準備/矢〉で瞬時に矢を抜いて弦につがえ、2ターンかけて狙いを付け――― ―――Shooting!! |
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見事命中したのですが、何とメイド服で止められてしまいます。 …え?弓矢最大威力を誇る「刺し/2D」の攻撃なのに? 一体、何で出来ているんだ?あのメイドは…… 実は、まほろが着用しているメイド服は「ブリガンダイン」と呼ばれる防具で、見た目は美しいレザー・アーマーですが、内側から鉄板が張り付けられて補強されており、防御力が大幅に向上しています。その上、防具魔化呪文《強化》が魔化されており、柔らかな見た目に反して防護点6もあるシロモノです。 リアル中世でも、馬に乗らない歩兵や軽装を好む騎兵が愛用し続けたと言います。 (「ブリガンダイン」はガープスのルールでは存在しませんが、レザー+金属板の複合装甲という構造は「スケイル・アーマー」と全く同じなので、ルール上では「スケイル・アーマー」として扱うのが妥当です。地球の歴史においても、最初はスケイル・アーマーを使っていた文明が、後にブリガンダインに切り替える例が、東洋から西洋にいたるまで広範囲で見られます)。 6秒目、ルシアは再び矢を装填、狙いをつけて同じように発射します。 重いブリガンダインを着用しているまほろは「よけ」が下がっているため、2射目も命中しました。しかし、肝心の矢が防具を貫通しません。 |
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ルシアの第1フェイズが終わったので、次にまほろの第1フェイズを処理します。 まほろが装備しているクロスボウは『ヴェスパー・アラート』(宵の明星の警告)という名の魔法のクロスボウです。《従者》と《連動》の呪文の魔化が為されており、「弦が張られていない場合、自動的にこれを張る」という動きを行います―――要するに、使用者が何もせずとも勝手に2ターンかけて弦張りの「準備」をオートマチックに行ってくれるという優れものです。 これの使用者は、2ターンの間に悠々と矢を準備していればいいので、〈準備/矢〉技能が必要ありません。あるいは空いた手で別の事をすることもできます…例えば、射撃呪文を撃つといった事です。「クロスボウの自動装填中に、空いてる手で射撃呪文を連打して牽制する」といった事も可能です。 なお、《連動》の呪文により、自動装填を止めたい場合は「OFF」にすることも可能な設定になっています(普段持ち歩く際は張力が弱くなるのを防ぐため、弦張りはしない方が好ましいでしょう)。 1~2ターン目、まほろは自動装填を待つ間に《鷹目》の呪文に「集中」し、3ターン目冒頭に発動しますが…なんと17の目を出してしまい、判定に失敗。再び呪文に集中し、5ターン目の発動には成功しました。 |
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1ターンかけて矢の装填作業を終えたまほろは、3ターン狙いをつけて目標値16まで上げて…… ―――Fire!! |
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ルシアの「よけ」は目標値8(成功率25.9%)という際どい値なのですが、これがギリギリ成功!攻撃を回避しました。 ちなみにルシアの鎧は魔法のレザー・アーマー(防護点3)なので、体力15の『ヴェスパー・アラート』(刺し2D+1)の太矢が命中したら、高確率で一発撃破されてしまいます……危ないところでした。 |
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ルシアの第2フェイズ。 「〈準備/矢〉で矢をゼロ秒で引き抜いて弓につがえ」「狙いを付け」「発射」を3回繰り返します(最初の1射目だけ「狙い」を2秒にして精度を向上)。 ―――Let's Shooting!! |
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1射目は狙いをつけたにも関わらず、命中判定で失敗。 しかし、2射目と3射目は命中!2射目は例によってブリガンダインに止められましたが、3射目が深々と突き刺さり6点ダメージ。 実はあまり生命力の高くないまほろは、残りHP3にまで追い込まれます。 ただし、今回の射撃フェイズのルールでは、ダメージによる転倒や衝撃は無視する仕様なので、とりあえずHP1以上が残っていれば戦闘を継続できます。まほろは瀕死の重傷を負いつつも、踏ん張って戦闘を続行。 |
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―――あ。 これは殺し屋の目だ…… |
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まほろの第2フェイズ――― 「自動装填2秒(その間に矢の準備)」「矢の装填」「狙い」そして発射!(ここで5秒) 『ヴェスパー・アラート』の1射目に対し、ルシアは奇跡的にも目標値8の「よけ」に成功!2回連続で25.9%のダイス目を引き当てるとは、なかなかの強運です。 しかし、幸運は3度続きませんでした。 |
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10秒目に放たれた2射目―――メイドの凶弾が命中! 魔法で強化されたレザー・アーマーとはいえ、体力15のクロスボウの前では紙装甲です。太矢は彼女の肩を貫通し、実に18点ものダメージをマーク。生命力9しかないルシアは、たった一撃で死亡判定に突入してしまいました。 ルシア・ライトグレースの敗北です。 |
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…幸いなことに、直後のルシアの生死判定は、出目4で生き残りました。ただ、意識維持判定で失敗。 しかしそこへ、退却中の仲間が何人か戻ってきて、彼女を運んでくれました。ルシアはからくも生き延びます。 対するメイド「まほろ」は、1人で追撃していた上、こちらも瀕死の重傷を負っています。そのため、撤退支援に来たシーマンたちに阻まれ、自身も撤退するしかありませんでした。 |
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全体の勝負は痛み分け、といったところでしょうか…… まほろが余計な追撃をしなければ、こうはならなかったかもしれませんが。 |
[編集手記] ガープスのデータを見る限り、弓矢最強のコンポジットボウよりもクロスボウの方が明らかに強いんですが、歴史ではロング・ボウもよく取り上げられるので、「言うほど強いのか?」を検証するために、今回のレポートを作成しました。 結果はクロスボウに軍配が上がったようですが、とりあえず個々で見ていきましょうか。 【弓矢の価値は?】 「中世のアサルトライフル」の異名を取るだけあり、連射能力は確かにありました。 ただ、貫通力が致命的に低いんですよ。 クロスボウなら体力9しかないひ弱な女性でも、簡単に致傷力2D以上の威力を確保できるんですが、弓矢は腕力、弓の質、矢の魔化具合で大きく変動するため、弓矢特化キャラにしないと実戦で使えない気がします。 致傷力2Dを実現するためには、具体的には「体力11でコンポジットボウを装備し、《鋭さL2》の魔化が施された矢($102)を用いる」か、「体力13でコンポジットボウ装備、《鋭さL1》の魔化付き矢($27)を使う」かするしかありません。これはお金もCPもかさみますし、そこまでやって相手が《矢よけ》とか使ってきたら、ほぼ使い物にならないキャラになってしまいます。 もし100cpで弓キャラを作るのであれば、弓矢以外に近接戦闘もできるようにしておいた方が無難という気がします。 今回、主人公のルシアは、レスティリ氏族独自の《弾丸強化》の呪文を用いていたため、「体力11+コンポジットボウ+鋭さL1の矢」の条件を整えるだけで致傷力2Dの域に到達していますが、人間で同じ性能のキャラクターを作ろうとすると、威力確保のために体力か「財産/富裕」以上が必要となり、肝心の弓矢技能レベルがあまり高くなりません。 やはりレスティリ・エルファの魔法射手が「最強のアーチャー」を作るのに一番近道だという結論に。近接戦闘も《化身》の呪文一つで事足りるという部分も大きいです。 一応、今回使用した弓矢陣営のキャラクターの簡易データも表示しておきます。 ■独立自営漁民シーマン(25cp) 体力:11 敏捷力:12 知力:11 生命力:10 移動力:5 能動防御:よけ5/うけ6/とめ- 受動防御/防護点:3/3 攻撃: ロングボウ/技能レベル14:刺し1D+1(抜撃ち15 正確さ3 射程165m) 解説:旧ペテルギュア王国で富裕層の人間の漁師たちで構成されています。ヒマな時間を見つけては弓矢の練習を行い、戦争では傭兵として稼ぐといった、リアルにおける中世イングランド王国の独立自営農民(ヨーマン)と似たような生活を送る人たちという設定です。 実は当初、人間のリャノ信者ではなくて彷徨いの月のディワンをこの役に充てようと考案していたのですが、ディワンは射撃武器として独自のガリキシャ(水中用クロスボウ)を使うため、今回の検証には全く合わないので断念しました。 なお、シーマンたちは〈弓矢〉技能に16cpも突っ込んでいます。リアル史実のヨーマンたちも、左右で腕の長さが違うほど骨格が歪んだり、弦を引くときに使う指が曲がったまま伸ばせなくなったりといった、完全に弓矢を射る事に特化した体になってしまっていたそうです。職業病って怖い。 【クロスボウの価値は?】 「まともに扱えば」クロスボウの方が強いはずです。今回のレポートが、それを証明しています(あくまでガープスのルール下で、ですが)。 では、なぜ歴史上のフランス軍は何度も醜態を晒したのか? 答えは簡単。百年戦争時のフランス軍は「戦略を重視するあまり、現場の戦術をないがしろにし過ぎた」んだと、管理人は考えています。 百年戦争の記録では、フランス軍の無能がよく書かれるんですが、フランス軍は常にイングランド軍の2倍以上の兵力を集めるのに成功しており、この時点で「イングランド軍は戦略で負けてる」んです。 だって、相手に勝てるだけの戦力をあらかじめ集めておき、戦場でぶつけるのが軍事の基本ですよ?あとはまともに戦えば、戦力の多い方が勝つに決まってるんですから、イングランドは常に戦略面で負けているにも関わらず、戦いを挑んでいたことになります。 ところが当時のフランス軍は、軍とは名ばかりの烏合の衆で、騎士同士の私闘の連続という戦いしかできませんでした。下っ端の傭兵なんて、おおよそ人権を認めてないような雑な使い方しかしてません。これでは、数の優位なんて帳消しになってしまいます。 「クレシーの戦い」で悲惨な目に合ったジェノバ人傭兵の弩兵部隊ですが、その後の「アジャンクールの戦い」でも酷い扱いを受けています(せっかく戦場に来たのに、フランス騎士が手柄欲しさに彼らを後ろに追いやり、ほとんど戦う機会を与えられませんでした…何のために戦場に来たのだろうか)。 騎士たちは相手の高名な騎士を人質に取り、身代金を貰う事しか頭になかったと、中世の戦闘レポートにはよく書かれています。当時はフランス軍だけでなく、欧州全体でそれがスタンダードな戦い方だった、というわけです。そうした「騎士道」を勝つために無視したのが、イングランド軍の主な勝因だったのでしょう。 今回使用した戦列メイド兵たちの簡易データを表示しておきます。 ■戦列メイド兵(25cp) 体力:11 敏捷力:12 知力:11 生命力:10 移動力:5 能動防御:よけ4/うけ5/とめ- 受動防御/防護点:3/3 攻撃: クロスボウ/技能レベル15:刺し2D+1(巻き上げ20T/抜撃ち12 正確さ4 射程300m) 解説:トルアドネス帝国領ハン公国に住んでいる人間の農家の娘たちが、畑が使えない時期の出稼ぎとして、帝国専門の傭兵部隊を営んでいるという設定です(リアルでこれに近いのは中世のスイス傭兵でしょうか)。 ハン公国はドワーフの国であり、人間の娘たちもドワーフの女系社会に釣られて独立心が強く、腕力を鍛えている者が多いようです(リプレイ「月に至る子」より)。そんな娘たちが、メイドの恰好をして戦うのが「戦列メイド兵」です…「なぜメイドなのか?」というのは謎です。きっと帝国のサリカ神殿に伝わる聖人の中に、メイドの恰好で戦場で活躍したジャンヌ・ダルクみたいなサリカ司祭がいたのでしょう(笑)。 【ルシア・ライトグレースというキャラ】 元ネタは、カプコンのベルト・アクションゲーム「D&DRコレクション」で登場する魔法剣士のエルフの女の子です。ルシア・ルグラースの名前で登場します。氏名のルグラースは、おそらくフランス語の「ラ・グラース」(神の恩恵という意味)から来てると思うので、ルナルのエルファの氏族名は英語表記がスタンダードなのに合わせて「ライト・グレース」(光の恩恵)に変更しています。ちょうどレスティリの氏族名っぽくていい感じです。 原作のルシアは、剣と魔法を扱い、弓矢もちょっとできるというマルチロール・キャラクターなのですが、ルナルのエルファは近接戦闘では《化身》の呪文を使えば解決するので、射撃の部分だけフォローするキャラメイクが正しいと思われます。それが、今回のコンステンツ内容にぴったり一致していたので、主役として抜擢させてもらいました。 ちなみにルシアのMMDモデルですが、いろんなキャラクターのパーツが混じってます。 【まほろさんとロベルタとかいうキャラ】 今回の敵方の主役は、古い漫画「まほろまてぃっく」に登場する「最強のアンドロイドにしてメイド」の「安藤まほろ」さんです。メイド系のMMDモデルはたくさんあるので、それっぽいのをカスタマイズして作るのに苦労はしませんでした。 実のところ、ニコニコ静画で「戦列メイド」というイラストがあり、これを「ガープスでやりたいなー!」とか以前から思っていたのですが、今回、ちょうど良い題材だったので採用。 で、誰をリーダーにしよう?と考えていたところ、「戦闘ができるメイド」となると、管理人の知識範囲では「まほろまてぃっく」のまほろさんか、「ブラック・ラグーン」のロベルタしか思いつかなかったので……面倒なので両方を出しました(笑)。 管理人はあまりアニメオタクではないので存じませんが、おそらく元祖となる「戦闘力最強のメイド」はまほろさんだと思います。他にもメイドキャラはいるようですが、知名度が高く、最古のバトル・メイドとなると、日本ではまほろさんかなぁと(実際のところは存じませんが)。 そして、割と最近の漫画である「ブラック・ラグーン」のステージ1のボス(笑)であるロベルタは、明らかに「最強のメイド・安藤まほろ」の設定を汲んで作られたキャラだと思われます。こっちはかなりリアルに最強のメイドであり、国際指名手配を受けてる元テロリストで、銃の扱いとか身体能力がかなりおかしいお姉さんですが(笑)。 最後に、レポートに登場した敵のまほろさんのデータも挙げておきます。レポート内に登場したまほろさんのデータは、下の方の劣化バージョン(100cp)のデータを用いています。 |
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【基本設定】 トルアドネス帝国の皇帝の従妹にして、ブラン公国の女王ランナカイ・ジェムが、現地の魔術師団〈第二の夜明け〉に依頼して、自分そっくりの影武者を作ろうとしました。魔術師団は《エイリアス》という呪文を開発し、ランナカイと全く同じ遺伝子を持つ生身のコピーを生み出す事に成功します。その第1号が「MAHORO」です。 MAHOROは「エイリアス(複製体)」と呼ばれる存在で、生まれた時から15歳の身体を持っています。系統としては「ガープス・グリモア」に掲載されている《ドッペルゲンガー》《ホムンクルス》の呪文の流れを汲んでいますが、ドッペルゲンガーと大きく異なるのは「肉体は本物である代わりに、コピー元の記憶は全く受け継がない」事です。つまり彼女は、ゴーレムではなく本物の生身の人間なのです(キャラクターシートで管理される存在です)。 MAHOROの教育は非常に特殊でした。主に魔術が用いられ、「《偽記憶》の呪文であたかも熟練の兵士が体験したような記憶を植え付けて技能を習得させる」「《技能賦与》の呪文で一時的に技能を与え、効果時間中に反復練習を行う事で実際に自分の技能として身に着ける」といったものです。この訓練は効果を発揮し、MAHOROはわずか1年で記述されたような120cp分の技能を獲得してしまいます。 また、効果が永続する能力値向上用の強化エリクサーが開発され、投与された彼女の各能力値は、常人を遥かに超えるものとなりました。 こうして生まれてすぐ英才(改造?)教育を施され、超人と化した彼女は、2年目以降は各地の戦場を駆け巡り、文字通り一騎当千の能力を見せつけ、赤の三国を震えあがらせます。しかし、活動3年目を終えたあたりから、体調が急変します…。 【設計思想】 メイン武器であるクロスボウ『ヴェスパー・アラート』の装填中、空いてる側の手で「〈準備/矢〉で矢を一瞬で構えて「集中」→次のターン冒頭に《飛ぶ剣》で矢を飛ばす」これを繰り返し、装填中にも攻撃できるようにしたキャラクターです。 《倍速》を25レベルで習得しているため、戦闘になったらまずこれを使い、1ターンに2回行動するようにします。すると、クロスボウの弦張り2秒の間に《飛ぶ剣》で矢を飛ばす作業を合計4回行えるようになります(ほとんどサブマシンガン)。 クロスボウの装填を終えた後のターンは、「〈準備/矢〉で一瞬で矢を準備して装填→抜撃ちで撃つ(or狙いをつけて次のターンに撃つ)」となります。その次のターンから、また自動装填しつつ《飛ぶ剣》で牽制射撃する…そんな流れになります。 つまり、「3ターンに一度、クロスボウの射撃を行い、それ以外のターンは毎回2発の矢を飛ばす」といった流れになります。 中距離での射撃メインのキャラですが、近接では《死の手》が瞬間発動で使えるので、《倍速》の二回行動と組み合わせることで「防護点無視の2Dダメージを2回放ってくる白兵戦用キャラ」にもなれます。本人は《死の手》の呪文の事を「輝ける闇」と呼んでいます。 なお、本気で戦うときは、あらかじめ《すばやさ》の呪文で敏捷力を2点ほど上げておくと良いでしょう。また、《韋駄天》をレベル1で維持することで、移動力と「よけ」を+1する事ができます。熟練によりレベル1の維持コストがゼロなので、起きてる間はずっと維持し続けても構わないでしょう。 あと、《浮遊》の呪文も使えるのですが、これはあくまで段差移動用です。普段は徒歩で走って移動する事を想定しています。 |
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【基本設定】 ―――「エイリアス計画」は失敗でした。 MAHOROの活動が3年目を過ぎた頃、何の前触れもなく、彼女の身体能力がごっそりと落ちていきました。魔術師団のウィザードと人間のペローマ神殿の合同で発足したエイリアス管理セクター「ヴェスパー」は、慌ててエリクサーを大量に再投与したのですが、彼女の体は強化エリクサーに対して耐性がついてしまったのか、元に戻りませんでした。 また、エリクサーの大量投与が引き金となったのか、彼女の記憶が次々と消えていくアクシデントが発生します。元々、彼女の記憶は《偽記憶》の呪文で作られた「実在しない記憶」ですが、「元となる本物の記憶がないのだから、偽記憶が喪失することはないだろう」と考えられていたのですが、それは大きな間違いだったと今頃になって判明します。しかし、もはや手の打ちようがありません。 さらに悪い事に定期バイオチェックの結果、彼女の寿命があと2年しかない事実が発覚します。エリクサーの過剰投与によるものか、それとも《エイリアス》の呪文自体が不完全なのか、それすら現時点では不明です。《若返り》や《老化停止》の呪文も使われましたが、どういうわけか全く受け付けません(この事実から、おそらくエイリアスという存在自体に問題があるのでしょう)。 毎日、毎日、なすすべもなく流れ落ちて空白になっていく自身のメモリーに、涙を流すしかないMAHORO。 そんな彼女を見守っていた公女ランナカイは、自分の分身のような存在である事から同情して心を痛め、ついにMAHOROに対して無期限の休暇を与える事にしました。「あなたはもう十分に帝国のために働いてくれたわ。残りの人生は、貴方自身のためだけに使いなさい」と。 しかし、MAHOROにとって「自分の記憶」などというものは全く存在せず、唯一、自分自身の記憶といえるものは、2年間、各戦場で敵兵を大量殺戮した記憶だけです。今の彼女は「かつてハイパーソルジャーだった」という記憶と、それに伴うプライドだけにすがって生きています。まだ辛うじて戦闘行為が可能な程度の身体能力はあるので、現在はハン公国の戦列メイド兵部隊の指揮官を勤めています。過去の血が騒いで、時に無謀な突撃をする事もあります(レポート中の無用な追撃の原因もこれです)。 しかしあと1年もすれば、戦闘行為もままならぬほど衰弱するでしょう……。 なお、このシートの状態からさらに1年後、エイリアス管理セクター「ヴェスパー」に務める1人のペローマ神官の研究員の息子と運命の出会いを果たし、残り1年の寿命を彼のために使おうと、本物のメイド生活を送るようになるのですが…それは別の機会に語る方が良いでしょう。 【設計思想】 かつてのメイン武器『ヴェスパー・アラート』はまだ所持しているので、これを使って射撃を行うキャラクターとなっています。また、当時着用していたブリガンダイン・アーマー『フラット・アサルター』も携行許可が出ているので、これを着用する事で「砲台」に徹する事ができます。 ちなみに完全な余談ですが、この『フラット・アサルター』はハイパー・ソルジャーだった頃のMAHOROの活躍を妬む一部の帝国軍士官が「貧乳アタッカー」という蔑称で呼んでいたというウワサもあったとかなかったとか。 なお、近接戦闘能力はほとんど失われています。辛うじて〈格闘〉技能と《死の手》の呪文をまだ覚えていますが、実戦ではほとんど使い物になりません。 その一方で、記憶を喪失し始めてから自前で覚えた呪文として《鷹目》の呪文があります。これは自分自身の体験から神の啓示を受けて習得したものであるため、他の記憶のように忘れる事はなく、むしろかなりの熟練しました。これと『ヴェスパー・アラート』を組み合わせる事で、かつては出来なかった(倍速で接近すれば全て解決するので行う必要性がなかった)精度の高い狙撃行為が行えるようになりました。 【新たな特徴】 ●特殊な背景/エイリアス(20cp/10cp) 現存する人間の遺伝子を使って人工生成されたコピー人間で、ホムンクルスの一種です。エイリアスは《ホムンクルス》と同系列の呪文《エイリアス》によって、ガラスの容器の中などで生成されます。ただし、ホムンクルスのような中途半端な複製ではなく、全身が完全に再現されます。また、《ドッペルゲンガー》や《偽物》の呪文で生成されるような「見た目は人間だけど中身はゴーレム」ではなく、ちゃんと人間の肉体を持った1人のキャラクターとして扱われ、ドッペルゲンガーには不可能な「魔法の素質」の獲得も可能です。 製作者が選んだ年齢から人生をスタートさせる事ができます(通常は15歳の成人状態から)。こうした特徴から、エイリアスは簡易データではなくキャラクターシートで管理される存在となります。 エイリアスの記憶に関しては、複製元のホストからは流用できず、1から作り出す必要があります。それらは《偽記憶》などの呪文によって生成され、脳の記憶領域に植え付けられます。これはそのまま「本人の記憶」となり、実際に習得した技能として扱う事が可能です。これは、年齢に応じた技能に投資可能なCP量を完全に無視できる特典として扱われます。 またエイリアスは、特別調合された各種エリクサーを用いる事で、各種能力値を上昇させたり、「我慢強さ」や「戦闘即応」といった有利な特徴を後天的に取得する事ができます。ルール的には「ガープス・サイバーパンク」のサイバーウェアの特徴の獲得と同じように扱います。 この特徴は、現在のルナルでは魔術師団〈第二の夜明け〉の研究室でしか獲得できない特徴なので、20cpの「特殊な背景」として扱います。 なお、現状ではエイリアスの寿命は5年程度しかありません。残り寿命が2年になった時点で「死の秒読みL1」(-50cp)の特徴を得ます。またこの特徴を得た時点から、エリクサー投与で有利な特徴を得たり、呪文で偽の経験記憶を得る特典を喪失します。過去にそうして得た特徴や技能は、毎月の頭に生命力-2判定を行い、失敗したものは喪失します(1回の判定で喪失するCP総量はGMの裁量で決めて下さい。全て一気に失うよりも、徐々に喪失する方がドラマとして盛り上がるでしょう)。 こうした性質により、末期のエイリアスは10cpの「特殊な背景」として扱います。 平たく言うと「エイリアス」は、ファンタジー世界に「サイバーパンク」のサイバーウェアのルールを強引に導入するために作られた特殊設定です。 |