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■第14節 ドヤ顔ダブルシールド(サイキョウノツモリ)
 ファンタジーやSF世界ならではの現象として、「両手以外の攻撃手段があればいいじゃないか!」とばかり、ドヤ顔で両手シールドを行う例がある。
 しかし当然の話だが、両手にシールドを持つと手が塞がって攻撃手段を喪失し、さらに重量の増加により機動性も低下する。こうした存在は、敵にしてみれば「脅威」と見なされず放置される可能性が高く、戦術的に見てほとんど無意味であると言える。


 ルナル世界にも、この例が1つだけある。
 原作のアルリアナ信者の「基本的な戦い方」とされた、
「シールド・バトンを両手に構え、空手の蹴り主体で戦う」というスタイルだ。これは実質「両手盾」戦術であり、小説のレルシェやリプレイに登場したリーシャも、このスタイルで戦う格闘家だった。一見すると、絵的にも違和感を感じない。
 しかし当サイトの管理人は、この戦い方に色々と矛盾を見出した結果、改変ルールにおいて「シールドバトン」そのものを削除してしまった。これは、原作のアルリアナ信者の戦闘スタイルを全面否定する重い決断である。無論、「可能な限り原作に忠実なままルールを改変」をモットーとしている管理人が「削除」という暴挙に出た事は、それ相応の理由がある。

 ここでは、「管理人がシールドバトンを削除した理由」と共に、「じゃあどうすれば復権できるか?」について、色々と考察していこうと思う。
■状況
 まず、リアル世界における両手盾の何がダメなのか?を説明しておこう。
●火力不足
 当たり前だが、両手が塞がっていては武器が持てないので、攻撃手段が不足する。
 シールドそのものを武器として使う武術は歴史上でも実在しており、特に古代ローマ兵士が習熟していたと言われる。だが、あくまで剣と組み合わせてのサブ攻撃手段であって、メイン攻撃動作ではない。

●マルチタスク不可
 人間の意識は1方向にしか向けられないので、二方向から同時に攻撃された場合、一方向にしか対処できない。
 よって、盾が二枚あってもあまり意味はない。人間の脳(ソフトウェア)が、追加された盾(ハードウェア)を運用できないのだ。
 それでもなお実用性を考慮し、両手に盾を構えた場合、片方を前方に構え、もう片方を後ろに構える形が現実的だろう。
 しかし、後ろに関しては「背中に背負う」事で片手を空ける方が合理的であり、わざわざ手で保持する必要性がない―――どうせ後ろなど見えないし、仮に《背中の目》の呪文や「全周視界」の特徴で全方位対処したとしても、相反する二方向を同時に見て同時に対処する事など、人間の脳には不可能なのだから。

●非効率な強化ルート
 金属鎧とは、盾を持たず両手を攻撃に使えるように考案されたものであり、オールレンジに盾を構えて防御率をあげたいのであれば、シールドを追加するよりも金属鎧を着用し、本体の防御力を上げた方が良い。
 歴史上のシールドは、鎧の生産能力が未熟で脆弱だった古代ほど、広く分厚い大型のものが使われる一方、文明が向上していき鎧が厚くなる毎に小型化していった。盾を二重三重に施すくらいなら、鎧そのものを強化した方が明らかに効率が良いという事だ。

●要撃する方が効果的
 戦術的に見て、防御一辺倒では相手は様々な攻撃手段を一方的に繰り出せるわけで、いつか攻略法を編み出されてしまう。そうならないためには、こちらもある程度は攻撃を繰り出し、相手に自由な攻撃戦術を取らせないように牽制せねばならない(防御行動をさせる事で攻撃の機会を奪う→未然に多様な攻撃を防ぐ)。
 両手盾は、防衛戦術の基本を否定している上、こちらが敵を倒して勝つプロセスからも遠ざかっている。最終的な勝算につながっていないのだ。

 一方、両手に盾を持つ事のメリットも完全に皆無というわけではないので、それもフォローしておこう。
●低コストで高い防御力
 経済的に困窮していたり、文明的に劣る場合でも、比較的安いコストで防御を固める事が可能。実際、古代戦闘では味方の弓兵を守るため、大型の盾だけを持って戦場に立つ「盾持ち」なる兵種が存在していた。そして現代の地球でも、暴動鎮圧部隊がライオット・シールドやバリスティック・シールドを装備し、低コストで防御力の底上げを行っている。
 ガープス的に言えば、「財産/標準」でも「スケール・アーマー(《強化L1》魔化)+ミディアム・シールド+ミディアム・シールド」(合計$920 重量39kg)で受動防御9、防護点5という高い防御能力を得る事ができる。
 戦場において、味方の射撃アタッカーの盾役に専念するというのであれば、そういう選択肢もありかもしれない。

●突撃時の射撃防御
 こちらから攻撃を行わず、ひたすら相手の射撃に耐えながら前進して距離を詰めるといった局面において、白兵戦になるまでは両手に盾を構え、弓矢の攻撃に備えるという選択肢があり得るだろう。
 古代ローマのレギオンにおいて、「テストゥド」(亀の陣)と呼ばれる密集陣形が存在し、正面と上方をがっつり盾で敷き詰め、ゆっくり前進する事で、射撃に対して異様に高い防御力を得られたという。無論、野戦でこれをしても動きが鈍くて白兵戦に対処できないので、主に攻城戦で敵が立てこもる城に近づく際に取られた陣形だと言われる。
■本題
 次に、「原作ルナルのシールドバトンの何がダメだったのか?」を説明する。
①誤解を招く処理のオンパレード
 ガープスでは、盾を攻撃に用いても受動防御は有効であり、攻撃に使ったターンでも普通に「止め」を行える。
 ところが「シールドバトン」という武器は、「攻撃に使うと受動防御無効」「能動防御に使う場合は「受け」扱い」という、明らかに
ガープスのルールから逸脱した処理を行う。そしてこれは、黎明期のガープスのユーザーたちに、盾に関する誤った理解を広める結果になってしまった。例えば「盾を攻撃に使ったターンは受動防御は無効になる」などだ(実際はそんなことはなく、受動防御は有効であり「止め」も行える)。

 なぜこういう意味不明な処理をしたかの推測だが…
 おそらくシールドバトンは、対となる青の月の女神サリカの神殿武器
「バトル・ファン」を意識して、バトル・ファンと同じく「攻撃と防御で別々の機能が発動するような構造にしたかった」のではなかろうか。
 だが、シールドバトンの構造上、バトル・ファンの「開閉構造」のような変形機能が物理的に実装できないため、運用面で無理やり異なる機能を表現しようとした結果、このように意味不明な不可解な処理になったと思われる。

 しかし、こういう強引なやり方は、明らかにルールに対する誤解を招きかねないのでやるべきではなかった。実際に管理人も、シールドで攻撃する際のルールを間違って覚えていた過去がある。何を隠そう、この
シールドバトンの変則ルールのせいである。


②技能設定が明らかにおかしい
 初版の「ガープス・ルナル」が発行されてからかなり後になって、「シールドバトンはトンファーみたいな武器」という後付け設定がなされたのだが、「ガープス・マーシャルアーツ」には既にトンファーの設定があり、当然ながら技能もそれに合わせるべきである。

 ちなみに、〈トンファー〉技能は難易度「難」である。これは、「受け」動作等が空手のモーションに酷似するという理由もあるが、一方で攻撃面でも「棒の部分を半回転させて前に振り出す事で高威力の攻撃を繰り出す」動作の難易度が高い事に由来する。
 YouTubeなどで、リアルでトンファーで攻撃を行う動画を見てもらえば分かると思うが、「ハンドルの部分を軸にして半回転させ、打点に達した時点で手を握り直して寸止めの要領で当てる」動作は習熟難易度が高く、年単位での修行が必要だという。練習を続けると、手の皮は擦り剥け、痛みでハンドルを握るのも困難になるという。
 つまり、トンファーをマスターするには非常に長期間の鍛錬が必要だ。ガープスにおいて、難易度が「難」になっているのも納得できると思う。
 ところがシールドバトンは、なぜか難易度が「並」になっており、一体何を基準でそうなっているのかが全くの不明である―――片割れの女神サリカの独自武器「バトル・ファン」(難易度/並)と対になるように設定したかったのだろうか?

 物理的な問題もある。シールドバトンの攻撃動作は、トンファーと同じく「振り」扱いになっているのだが、そもそも棒の部分にシールドが増設されていてサイズが大きく、重量も重くなってるのに、トンファーと同じような片腕だけで振り攻撃動作が可能か言われると…物理的に考えて難しいだろう。さらに、片手の握力だけで定位置で寸止め!なんて行為は、非常に困難と思われる。
 極めつけは、ガープスのルール下において「受動防御が得られる」なら確実にシールド扱いなのに、なぜか能動防御が「受け」扱いになっている事。これはもう物理的に説明が付かない。
「バトル・ファンと同じような処理がしたいがための強引なヘリクツ設定」以外の何物でもない。

 こういった物理法則無視・意味不明な技能設定は、「既存ルール厳守」「ガープスを使っている以上は物理法則を基本遵守」をモットーとする管理人にとって、完全に「アウト」だった。仮にマンガ技能で説明するにしても、他のシステムとの整合性が取れない。
③戦術そのものが破綻している
 素手攻撃は相手の武器で「受け」られると、攻撃部位を逆に負傷させられる大きなデメリットがあるため、普通は極限状態(素手以外の反撃方法がない状況など)か、最初から素手同士の試合環境でしか用いられない。
 だが、アルリアナの蹴打術は普通の戦闘で用いる事を想定されているため、そうなると蹴りの入れ方にも一工夫がいる。つまり、相手に足を武器で受けられぬよう、武器で「受け」られない間合いで蹴る等だ。具体的には、〈空手〉技能による蹴りは近接(距離C)でも行える事から、相手へクスに侵入して蹴るといった行為が必要だろう。

 ところが、両手に持っているシールドバトンは「盾」扱いなので、近接戦闘で盾を持っている場合、「近接2ターン目以降は盾の受動防御値分だけあらゆる命中・敏捷力判定にマイナス補正」というルール(ガープス・ベーシック完訳版p152サイド・バー【近接戦闘での盾】)に抵触してしまう。
 要するに、近接戦闘での盾は邪魔でしかない。にも関わらず、両手に盾を持ちキック主体で戦えと言っている。
武器受けされて足を負傷したくないから近接したいのに、近接すると盾が行動を邪魔するという、なんともバカげた仕様―――つまりこの戦術構想は、最初から破綻している。


④アルリアナ信仰だけ神殿武器&独自技能多すぎ問題
 これはルナルの作者がよくやらかしていた悪癖だが、
「自分が気に入ってる信仰の信者データだけやたら設定を詰め込んで有利にしたがる」という問題があった。初版「ガープス・ルナル」では、アルリアナ信仰だけがやたら独自技能が多く、「優遇されすぎ」の不平等な状態だった(後期だと、同じく過剰設定のエルファのジャング氏族やカアンルーバ氏族がその対象として問題になった)。

 これらは、
公正なゲームを行う上で非常によろしくない。キャラクター作成の信仰する神を決定する段階で、有利不利があってはならないからだ。
 ちなみに現実世界では、各宗教のサービスの格差は(教団ごとに経済力が異なるので)普通に存在する。だが、ゲームの中では不遇な信仰があると、大半のユーザーはその信者のキャラクターを作らなくなってしまう。なので、「キャラクター作成の選択肢の幅」が減るのを回避するため、格差を是正せねばならない(あくまでゲームとしての事情)。

 そこで管理人は、改変ルールを作るにあたって、最も設定矛盾を引き起こしていたシールドバトンを削除する事で、他の信仰とのバランスを取った。



 ―――以上のような数々の理由から、管理人はシールドバトンそのものを消し去るという重い決断を下した。無論、ルール改善した上でシールドバトンを実装しておく手もあったが、そもそもアルリアナ信仰は④の理由により設定過剰状態であったため、どうしても何かを減らさざるを得なかった(独自技能があまりに多すぎた)。
 結果、「1から作り直した方が早いシールドバトン」を削除する決断を行った。ぶっちゃけシールド・バトンなど使わずとも、ベーシックに載ってる
「バックラー」(受動防御1)を両手に装備すればほぼ同じ効果が得られる上、射撃に対して脆弱な格闘家にとっては非常にありがたい「止め」が行えるようになる(ほぼ上位互換)ことから、受動防御1しかない上に「止め」もできないシールドバトンなど、最初から産廃兵器だったと言わざるを得ない。
■対策と評価
 「管理人がシールド・バトンを削除した理由」は上に書いた通りだが、では仮に残すとしたら、どのような設定が相応しいだろうか。ここではそれを検証してみよう。
●九節鞭+盾の運用
 両腕に盾+蹴り攻撃戦術に合理性がないのは上の通りだが、もう一つの運用法として「利き腕に九節鞭を持ちつつ、逆手にシールドバトンを持つ」という例が挙がっている(初版ガープス・ルナルの文中でのみで確認)。
 こちらの運用法は「九節鞭で攻撃しつつシールド・バトンで防御する」という標準的な戦術であり、リアルにおいて九節鞭は盾とセットで使う武器ではないものの、「九節鞭→フレイル」「シールド・バトン→スモール・シールド」と脳内変換すれば、一応リアルでも通用する戦い方になる(フレイル+盾はファンタジー世界における神官戦士のスタンダードな武装スタイルの1つである)。

 この設定を採用する場合、シールド・バトンは完全に盾扱いとなるだろう。あとは「バトン」の部分をどう再現するかが問題となる。考えられるのは以下。

①セット武器
 一見するとバックラー(小型盾)だが、裏にバトンが収納されており、咄嗟に抜いて追加武器として使えるという案。シールドを「鞘」と見る事もできる。「シールド・バトン」というよりも「シールド&バトン」と言った方が適切か。

 地球における小型盾「バックラー」は、片手剣とセットで運用するのが基本だった。そこで、ルナル世界では「バトンとセットで使うのが一般的」という設定にしてしまおうというもの。
↓つまりこれ。
 最初は九節鞭を構えておき、接近されたら近接戦闘に弱い九節鞭は捨て、即座にバトンを抜いて対抗するといった運用が想定できる。この場合、サリカ神殿武器のバトル・ファンと同じく、難易度「並」の技能として統合してしまってもいいだろう。

②シールドがトンファーに変換
 最初は「逆腕持ち」のシールドであるが、留め具を外すとシールド部分だけが外れ、残った取っ手の部分がトンファーとして機能するという案。
 長距離を前進する際、移動中は両手盾で相手の射撃から身を守りつつ、接近したら片方を武器に変換し、敵を殴り倒すといった運用が想定できる。古代ローマのレギオンが行った「テストゥド」(亀の陣)のルナル版といったところか。
 この場合、トンファーの亜種技能と言う事で難易度「難」の技能として扱い、シールド中は技能レベルの2分の1で「止め」が行える一方、トンファーに切り替えた時点で技能レベルの3分の2で「受け」が行えるように変化するようになる。シールド部分はバックラーではなくスモールシールドくらいの大きさにして、射撃対策手段によりシフトした方が良いだろう。
 技能難易度が上がった分、通常の盾よりも「止め」の目標値が損してしまうが、シールドのサイズをバックラーからスモールシールドに変更して受動防御を底上げする事でフォローできる(携帯性の良さを喪失してしまうが)。


●ライオット・コントロール・バトン
 上記の②の考えを、さらにファンタジーな方向に発展させ、シールド部分を投棄するのではなく、先端まで移動変形させて「打撃部位」に変換。ハンマーのような鈍器として攻撃に使おうという案。「スターウォーズ」の最新作エピソード7において、ファースト・オーダー所属のストーム・トルーパーが所持していた「Z6暴動鎮圧用警棒」のようなものを、ルナル世界で再現してしまおうという趣旨。
 留め具を解除して下に振り回す動作により、シールドが棒の先まで降りて、シールド部分がハンマーの打撃部分ような扱いになるといったギミックが考えられる。
 作品に登場したライオットバトンは、映像を見るかぎりは一応トンファーのような逆手運用を行っている。だが、トンファーほどの安定感はなく、使用者のストーム・トルーパーはバトンの重量にかなり振り回されている印象を受ける。そのため、〈剣〉技能で扱う小型クラブや〈斧/メイス〉技能で扱うメイスに近い武器と考えた方が良さそうだ。
 難易度は「並」で、シールドとして運用中は技能レベルの2分の1で「止め」が行える一方、トンファーに変形後は小型クラブとして扱われ、受動防御は得られず、技能レベルの2分の1で「受け」が行えるといったところか。


●総評
 …色々と案を挙げたが、どれも一目見て分かる欠陥があるため、実用性に乏しいと思われる。

(シールド&バトン案)
 格納された武器がバトンである必然性がない。殺傷能力を考慮するのであれば、素直に直刀のナイフかショートソードを仕込めば解決である。また、敢えて武器のシールド格納にこだわる意味もない。

(シールド・パージ案)
 こんな面倒なギミックを使わずとも、ラージシールド1枚を構えて突撃し、接敵した時点で盾を捨てつつ鞘から武器を抜けば解決と思われる。シールド切り離し機能を付けた分だけ武器の複雑さが増したわけで、余計な故障箇所を増やしているだけである。

(暴動鎮圧用警棒案)
 いちいちシールドから警棒に変形する機能のメリットがない(せいぜい携行性が向上する程度)。また、先端部で殴るという非常に雑な扱いをする事から、支点となる変形機構が真っ先に壊れる可能性が高く、TL3の製造技術では1回の戦闘でダメになる可能性が極めて高い。

 また本体が重くなりすぎて、片手の握力で逆手に持ちながら振り回す行為自体、物理的に無理があり過ぎる。実際、スターウォーズのライオット・コントロール・バトンの裏設定には「戦闘中に手から抜け落ちないよう、グリップは磁気原子でトルーパーの手袋に張り付く粘着式になっている」というフォローがあり、何らかの工学的フォローなしでは運用不可能である事を示唆している。
 ちなみに、ルナルのようなTL3の世界でこれと同じ事をやろうとすると、《固着》などの魔化呪文でフォローするしかなく、そこまでして実装するメリットのある武器とは到底思えない。


 …結局のところ、「メリットがあるから新武器を作った」のではなく、「新武器を作りたいがために無理やりメリットを付けた」感が半端なく、実用性に乏しいのも当然の結果といえる。

 天才にかかれば何かしら解決手段が見つかるのかもしれないが、凡庸な管理人の知能では、これ以上の妙案は思いつかなかった。よって、当サイトにおける
改変ルール下での「シールド・バトンの再実装」は断念するものとする。
■悪あがき
 各レア様から苦情が殺到したので シールド・バトンの実装こそ断念したものの、「両手盾」の戦闘スタイルに関しては、まだ魔法が存在するファンタジー世界ならではの戦術が考えられるので、ここでは「ドヤ顔ダブルシールド」の実用的運用方法を考案する。


●通常呪文
 「ガープス・マジック」における呪文は、15レベル以上で熟練していれば「わずかな動作(指だけ)とともに呪文を一、二語唱えるだけで十分」とあるため、両手にシールドを持っていても発動可能である(盾を持つ手でスリングの弾丸が装填できるのだから、指動作程度なら普通にできるはずである)。

 《脱水》《凍傷》などの直接ダメージ呪文や、《誘眠》などの一撃必殺呪文で攻撃可能な他、《火吹き》のように腕以外から発射可能な物理攻撃呪文であれば、両腕が塞がっていても攻撃能力は保たれる。



●《飛ぶ剣》
 実は、手が空いてなくとも使用可能な射撃呪文が1つだけ存在する。それは、飛ばす物体を目標とする《飛ぶ剣》である。例えば、背中のバックパックにナイフやジャベリンを入れておき、この呪文で飛ばすといった攻撃が可能だ。

 なお、過去にグループSNEのホームページで運営されていた「質問箱」によると、なぜか「離れた位置にある刀剣類を飛ばして射撃できない」と回答されているのだが、これの前提呪文は《騒霊》であり、この呪文は遠くから物体を操って別の離れた標的にぶつけるものなのに、その上位互換呪文が「できない」とするのは明らかにおかしい。
 よってこれは、SNEの回答者が間違っていると判断し、当サイトのハウスルールでは「離れた位置にある刃物を飛ばす事は可能」とする。


●《踊る武器》
 攻撃の自動化の極地とも言える手段。両手盾戦術でなくとも非常に強力な攻撃手段なのだが、最大の弱点として「この魔化アイテム自体の価格が異様に高い」というものがあり、「最も軽量な大型ナイフ(0.5kg)に《踊る武器》魔化」であっても$25,000もの購入価格を要求される(「財産/富豪」(50cp)でないと所持できない)。

 …実はこれ、両手盾戦術の数少ないメリットにある
「貧者でも安価に防御力を得られる」という部分を真っ向から否定している。要するに、「踊る武器の魔化アイテムを購入できるくらいの資金力があるのなら、盾二つなんて面倒な事はせず素直に魔化済みヘビー・プレートアーマー1着を買えば解決」という話になってしまう。

 よって今回は、この手段は敢えて無視することにする。


●シールドで殴る
 武器としてはあまり発展しなかった盾だが、TL3の環境下であれば、
盾で相手の顔面をどついて気絶を狙うといった戦術は、まだ辛うじて有効と思われる―――いわゆる「シールド・バッシュ」と呼ばれる攻撃手段が、タンカー職のメイン攻撃手段であるゲームは意外と多い。
 なので、咄嗟の攻撃手段として〈盾〉技能を上げておくのも悪くないだろう。


●サブウェポンとしてのキック
 上記で原作のアルリアナ格闘家を否定したが、
サブウェポンとしてキック攻撃は考慮して良いと考えられる。《飛ぶ剣》などの射撃が利かない敵や、疲労が蓄積して呪文を使う余力がなくなった状態での攻撃手段の1つとして、残しておいて良いだろう。


●飛行呪文
 両手盾戦術の欠点の1つとして、「重いシールドを二つも装備する事で荷重レベルが上がり、機動性が落ちる」というものがある。これを解消する手段として、《浮遊》や《飛行》といった移動系呪文の習得が考えられる。



 ……以上の設計理論に該当する存在を、管理人は1つ思い出した。
 
つまり↓これである。
 どこぞの世界に存在する大気圏内迎撃用可変モビルアーマー。

 迫りくる敵勢力に対して高速飛行で迎撃に向かい、一撃離脱戦術によって短期決戦で終わらせ、燃料が尽きる前に拠点に戻ってくるという、「再利用を前提とした有人対空ミサイルの亜種兵器」といったところか。


 
ドヤ顔ダブルシールドとはすなわち、これを作る作業に他ならない。
 ―――のかもしれない。
■サンプル・キャラクター
 以上の理論により、作成されたキャラクターが以下である。
【基本設定】
 グラダス半島オータネス湖王国の〈絵画都市〉タリスの領主の娘で、現在はお忍び状態でグラダス半島各地を旅する冒険者です。
 シーダが旅に出た理由は「世間を知るため」でした。同国のアリティア領マルス王子との結婚が決まっていた身分ですが、結婚してしまうともう領地を離れられないため、まだ幾分かの自由がある内に、せめてグラダス半島だけでも「世界」を知っておきたかったのです。そして、その理由ができるきっかけとなった出来事ですが―――10歳までサリカ神殿で読み書きを教えてもらった女教師が、町にいられなくなったからでした。

 世間でその女教師がどう思われていたかはともかく、シーダ個人から見れば「真面目で優しく良い先生」でした。そんな尊敬する先生が、どういうわけか犯罪者としてガヤン神殿に逮捕され、情状酌量の余地があったとして釈放されたものの、もはや町の人々からは相手にされず村八分され、とても町に住んでいられない状態となったのです。
 事情を知らないシーダはその現実を目の当たりにして、生まれて初めて町の人々に対して言いようのない怒りを覚えたのですが、そこでふと立ち止まりました。

『善良な人々までが彼女を遠ざけるようになったのは、
 やはりそれなりに正当な理由があるからに違いないわ。

 …でも私は、その事情を全く知らされていない。
 皆が私に気遣って、詳細を話してくれない。

 ―――私は、物事の表面しか見ていない。
 「世間」を何1つ知らない………』


 その件を境に、シーダは自分が「世間知らずの箱入り令嬢」である事をようやく自覚したのです。そして、この状態のまま許嫁の元に嫁いでも、自分は世間知らずのまま領主夫人となり、間違いに気づかぬまま失政を繰り返す暗君になるかもしれない―――それを危惧した彼女は、一度「庶民の目線」で世間を見る必要性を痛切に感じたのでした。
 そして、この件を父親に相談したところ、最初は猛反対されました。しかし、幾度も説得を試みて、ついには父親も「1年間だけ」「信頼するお供を連れて行く」という条件で、彼女の旅を認めました。
 こうしてシーダは、今は貴族令嬢ではなく、ただ1人の自由市民として旅をしています。名目上は「豪商の娘が見聞を広めるため」という事になっています。

 キャラクターの元ネタは、任天堂のゲームの初代「ファイアーエムブレム」に登場するタリス王国の姫君&ペガサスナイトの「シーダ」です。ルナル世界には天馬(ペガサス)は居なさそうなので、代わりに飛行呪文で代用しています。

【設計思想】
 両手にシールドを構えながら対空射撃を防ぎつつ、自分は手を使わなくても発射できる唯一の射撃呪文《飛ぶ剣》を用いて、大量に携帯しているジャベリンを飛ばして射撃するキャラクターとして設計されています。

 普段から《浮遊》の呪文を維持しておき、常に飛行状態をキープします。装備重量と体重を合わせて80キロ以内に収めてあるので、呪文の維持コストがゼロになっています。
 戦闘になれば、上空から《飛ぶ剣》での射撃を行います。ジャベリンは8本携帯しているので、これを弾丸に用います(威力は「刺し1D+2」)。呪文は15レベルなのでコストが1点減らせますが、それでも《飛ぶ剣》の最低消費が「2点」の制限があるため、1回射撃するたびに1点疲労します。最初は残り疲労点が4になるまで体力で支払い、足りなければ「作業用パワーストーン」(エネルギー2点の小さなもの)を順次支払いに充てる事で、ギリギリ全弾発射が可能なだけのエネルギーをキープできます。

 魔法のスモール・シールドを両手に構えているため、それだけでも+6もの受動防御修正を受けており、あまり致傷力が高くない弓矢の射撃や、ミュルーンの航空兵などに対しては有利に戦えるようになっています。
 反面、一撃の威力が高い射撃(怪力戦士が放つ手投げ武器やスリング、デルバイ信者のマスケット銃など)で攻撃されると、シールドを破壊されて優位性が失われる可能性があります。
 また、魔法抵抗に関しては全く配慮されていないため、魔術師との近接戦闘は危険です。基本的には飛行しつつ、少し距離を空けて上空から射撃するのがメイン戦術となります。《矢よけ》を発動している魔術師などが相手だと白兵戦を行うしかなく、しかも魔法抵抗が低いため、苦戦は免れないでしょう。

 「弾丸」であるジャベリン8本が切れた後は、シールドアタックや格闘キックなどで白兵戦を行う事が可能です。攻撃力を重視するのであれば、片方のシールドを捨て、1本だけ所持しているスピアを装備して、槍+盾というオーソドックスな戦術で戦っても問題ありません。《浮遊》で飛行している分、「高度差による修正」の恩恵を得る事ができるはずです。
■実戦
 タリスの侯爵令嬢シーダは、現在は「自由市民の冒険者」として旅をしています。冒険隊は、魔法戦士シーダ、戦士オグマ、僧侶リフ、魔術師イシュタルの4人で構成されており、この中でシーダとイシュタルは《浮遊》の呪文を習得しており、自力で飛ぶ事が可能です。

 彼女らは、オータネス湖王国からトリース森林共和国へと移動し、その途中で立ち寄った村からゴブリン退治の依頼を受けました。どうやら辺境で部族抗争に負けたゴブリン部族が、人里に現れたようです―――その数、およそ15体。
 ゴブリン部族は、支配階級のゴブリンと奴隷のオークで構成されています。このうち、オークは種族的に優柔不断である事から、実質ゴブリンをどうにかすれば部族は散り散りになり、地元の自警団でもどうにかなるでしょう。

 シーダは《浮遊》の呪文で飛行でき、さらにその状態で射撃が行えるエリート人材です。また、シールドを装備する事で地上からの対空射撃にも対抗できます。
 そのため、下手に全員で接近戦を試みるよりも、シーダが1人で飛んで行き、上空からヘッドのゴブリンだけを射撃戦で始末すれば、このクエストはほぼ解決すると考え、単独行動を提案しました。しかし当然の事ながら、シーダを守る事が最大の使命である残り3人の臣下たちは、これを拒否しました。

 ―――ですが、かつてサリカ神殿で教師として彼女を教えていたイシュタルだけは、臣下ではなく教師の立場になって冷静に考え、彼女が考案した戦術に賛成しました。ただし、シーダの単独行動ではなく、同じく《浮遊》の呪文で彼女に随伴できる自分もついていくという条件付きです…シーダは、その提案を了承しました。


 以下、シーダとイシュタルの2人でテストプレイを行いました。なので、イシュタルのデータも提示しておきます。
【基本設定】
 彼女は「第11章 ダブルセイバー」の項目で登場したイシュタルその人です。詳細は、該当ページを参照して下さい。

 彼女は、恋人である邪術師(元ウィザード)が犯した犯罪を手助けした幇助の罪に問われ、冒険者隊「箱舟船団」にノックアウトされた後、ガヤン神殿へと連行されました。しかし、尋問に対して素直に応じた事と、捜査妨害はしたものの捜査班の誰も殺さなかった事から、情状酌量の余地があるとされて仮釈放されました。
 …ですが、邪術師を匿った罪は町全体に知れ渡り、誰にも相手にされなくなってしまいました(「悪い名声」-3)。務めていたサリカ神殿の出入りも禁止とされ、教師の職を失いました。

 もはやタリスで暮らせなくなった彼女ですが、タリスの領主(シーダの父親)は、娘シーダが幼い頃、適切に指導してくれた過去の恩義を忘れてはいませんでした。そして事情を知った後、旅に出る娘シーダの護衛士の仕事を依頼してきたのです。それは、彼女の当面の生活費をフォローする事と、旅の途上で彼女の「新しい居場所」を探す機会を与える二つの意味合いがありました。
 領主の計らいに感謝したイシュタルは、領主の娘シーダの1年間の護衛の依頼を受ける事にしました。そして、かつての教え子を命がけで守る誓いを立てたのでした。


【設計思想】
 《浮遊》で飛行しながら、魔術具のクォータースタッフで《死の手》を叩きつける近接対応型の魔術師です。詳細は「第11章 ダブルセイバー」の項目を参照して下さい。戦闘になれば、必要に応じて《すばやさ》や《矢よけ》を用いて自身を強化します。

 射撃能力も一応備えており、パワーレベル1の《電光》であればノーコストで放てます。ただし、〈呪文射撃〉技能は最低レベルしか備えていないため、本格的に射撃するならば、まず《すばやさ》で敏捷力を底上げした方が良いでしょう。
●作戦行動開始
 戦列を組んで警戒移動していたゴブリン部族15名に対し、高度5メートルを維持しつつ突撃を開始しました。シーダとイシュタル、互いに一定距離を置いての前進です。ゴブリンたちはこれに気付き、リーダー格のゴブリンが迎撃を指示します。

 以下、ゴブリンたちのデータを表示しておきます。

■オーク雑兵 (モンスター表記) 12体
体力:12 敏捷力:11 知力:8 生命力:12
移動力:8 能動防御:よけ5/うけ5(格闘7)/とめ-
受動防御/防護点:0/1 体重:66kg 大きさ:1へクス
攻撃:
スピア(投)/技能レベル11(11)=刺し/1D+2(長さ1-2/抜撃11/正確さ2/射程12)
ハチェット(投)/技能レベル11(11)=切り/1D+2(長さ1/抜撃11/正確さ1/射程18)
小型クラブ/技能レベル11=叩き/1D+3(長さ1)
(格闘)パンチ/技能レベル11=叩き/1D-2(長さC,1)
(格闘)牙/技能レベル11=切り/1D-2(長さC)
特殊:暗視 鋭敏感覚L2 我慢強さ 頑健
*ハチェット3本所持。

■ゴブリン猟兵 (モンスター表記) 3体
体力:10 敏捷力:13 知力:12 生命力:10
移動力:6 能動防御:よけ5/うけ5(格闘8)/とめ-
受動防御/防護点:1/1 体重:34kg 大きさ:1へクス
攻撃:
レギュラーボウ/技能レベル14=刺し/1D-1(抜撃13/正確さ2/射程150)
大型ナイフ/技能レベル12=切り/1D-2(長さC,1)
(格闘)パンチ/技能レベル12=叩き/1D-3(長さC,1)
呪文:火炎12
特殊:暗視 鋭敏感覚L2
*《豊穣の角》が魔化された矢筒を所持。
Turn 01-03
 第1ターン目。
 シーダたちは飛行状態で3メートル踏み込んで、それぞれ呪文を唱えます。シーダは両手が塞がっていても使用可能な射撃呪文《飛ぶ剣》に「集中」します。
 一方、イシュタルは大声で古代神聖語の詠唱を始めました。言葉を知らずとも威圧的なその詠唱に対し、ゴブリンの指揮官は脅威を感じたようで、まずは味方全員にイシュタルを標的にするよう指示します。随伴するゴブリン2体は矢を抜き、雑兵のオークたちはハチェットを取り出しました。
 …ちなみに、イシュタルが使ったのは《矢よけ》の呪文であり、仰々しい詠唱とは裏腹に、地味な自己強化呪文でした。

 黒の月の種族のうち、ゴブリンは魔法に対する偏愛が強い種族であり、魔術に憧れると同時に、恐れてもいます。本物の魔術師が唱える呪文は、たった1つでも部隊を全滅させるくらいの威力がある事を知っているゴブリンたちは、両手に盾を持って射撃対策を徹底しているシーダよりも、鎧が薄く魔術師であるイシュタルの方を先に落とすべきと考えたようです。


 第2ターン目に、シーダが《飛ぶ剣》の呪文を発動。そのターンの行動は、ゴブリン1への「狙い」を定めました。その頃、イシュタルはさらに《すばやさ》の呪文を詠唱し、敏捷力を2点上昇させました。
 ゴブリンたちは弓に矢をつがえ、オーク12体はイシュタルに「狙い」を定めます。


 第3ターン目。
 シーダが呪文で飛ばしたジャベリンが、ゴブリン1に命中。6点のダメージを与え、ゴブリン1は朦朧状態に陥ってしまいます。
 一方、イシュタルは大声で《電光》の呪文を詠唱開始。普段は口数が少なく大人しい彼女にしては、異様なほど派手にやってます。

 そんな目立つ彼女に対し、オークたちのハチェットが次々と飛んできます。命中目標値は7(確率16%)。12発中、3発が命中し、しかも1発はクリティカル!
 ―――しかし、どんなに優れた目であろうと、《矢よけ》に対する射撃は一切の効果がありません。イシュタルは、かすり傷1つ負いませんでした。
Turn 04-06
 第4ターン目。
 シーダは《飛ぶ剣》の、イシュタルはパワーレベル1の《電光》の「狙い」を付けました。それぞれゴブリン1、ゴブリン2に標的を定めます。
 そこへ、イシュタルに向けてゴブリン1と3のレギュラーボウの矢で飛んできます。1発命中しましたが、例によって《矢よけ》によってこれは不自然に逸れました。魔法にはこだわりのあるゴブリンたちは、ようやく異変に気付きます。


 第5ターン目に、2人は射撃を発射!
 それぞれ命中し、シーダはゴブリン1のHPをマイナスに追い込み、気絶させました。一方、イシュタルの電光も命中はしましたが、パワーレベル1の電光ではさすがに威力が低く、全くダメージを与える事ができませんでした。
 …ここにきて、ゴブリン1が倒れた事で臨時指揮官に昇格したゴブリン2が、ようやく敵の目論見に気付きます。あれだけ大仰に呪文の詠唱をしていた敵の女魔術師は、攻撃に関しては明らかに手を抜いています―――つまり、彼女は囮役だったのです。
 イシュタルの目的は、自分が守るべき姫君が射撃の的にならぬよう、派手なパフォーマンスを行ってゴブリンたちの視線を引き付ける事でした。けれど、メイン・アタッカーはあくまでシーダです。
 その事に気づいたゴブリン2は、射撃目標をシーダに変更する事を指示します。


 第6ターン目。
 シーダにオークたちのハチェットの一斉投擲が殺到します!
 目標値7(16%)が12回、さすがに2~3発は当たるだろう……と管理人は踏んでいたのですが、なんと全弾外れ。これは……やはりヒロイン補正(?)がかかったのでしょうか。
 しかし、先ほどの最初の一斉射撃では、普通にクリティカルが発生していました。《矢よけ》の影響下でなければ、生命力の低いイシュタルは命中をくらって一撃で落ちていた可能性が高いでしょう―――つまり、ドヤ顔ダブルシールド状態で射撃に対して鉄壁のガードを誇るシーダといえども、ラッキーヒットであっさり落ちる可能性は普通にあったわけです。イシュタルはそれを危惧して、同伴して囮役を買って出たのでした。

 そして、あくまで結果論ですが、彼女の懸念は見事に当たっていました。もし、シーダが単独で出撃し、最初の一斉射撃に晒されていたら―――1撃を受けて気絶し、最悪あっさり負けていた可能性があります。
Turn 07
 第7ターン目。
 先ほどのターン、シーダは「狙い」をつけていました。オークたちの一斉射撃を受けましたが、幸運にも一撃も命中せず、回避行動を取らなかったので、別行動を取った場合に発生する「狙い」の強制解除を食らわずに済みました。なので、このターンにゴブリン2に向かって《飛ぶ剣》を発射。
 これは命中し、一撃で10点のダメージを与え、瞬時に昏倒させることが出来ました。

 …そして敵のターン。
 これを見たゴブリン3は、次は自分が狙われてジ・エンドになる事が容易に想像できたため、オークたちをほったらかして早々に逃走に入りました。
 それに気付いた後列のオークたちもまた、主人と同じように我先にと逃走に入りました。こうして戦列は総崩れとなり、ゴブリン部族は戦線を維持できなくなりました。


 シーダ御一行の勝利です。
[編集手記]
 「ファイアーエムブレム 聖戦の系譜」に登場したイシュタルの補完が不完全な気がしたので、やはり「その後」を描くべきだと思い、描くことにしました。

 シーダとイシュタルは、同じFE(ファイアーエムブレム)系列ですがそれぞれ別作品の登場なので、関連性は全くありません…が、最近の●天堂はパラレルワールドものというかクロスワールドものが好きらしく、FEヒーローズだったか何かで、FEキャラ全員が同じ世界で戦う系のゲームがあった気がします。なので、まぁ共演してもいいかと…

 …というか、このサイトの最初のマンチキン記事にて、この二人を共演させてるんですよね(笑)


(ダブルシールドの使い道)
 リアルでは使いどころのなかった両手盾戦術ですが、魔法が大々的に利用されているルナルにおいては「射撃戦特化環境において、中距離で撃ち合う時にちょっと理がある」ように感じ、そのようなレポートになりました…まぁ、結構危ない橋を渡ってるように思いましたが。

 両手盾の主な攻撃戦術は、「15レベル以上の呪文」か「《飛ぶ剣》での射撃」のどちらか、あるいは両方を備えるのが現実的でしょう。あと、《火吹き》の呪文で攻撃は口で行う、といった例も考えられます…ただしこの呪文、準備に2秒かかる上に難易度/至難の技能なので、膨大なCP投資量に対し、あまりコスパが良いとは言えず、最初に作ろうかと思ってましたが断念しました。
 なお、一番楽なのは「リャノ神官にして《凍傷》25レベルまでマンチキン上げして、防御は両手盾に任せてひたすらターン冒頭に瞬間発動」という、マンチキン作成の18番形式だと思います。両手にミディアム・シールド、鎧は魔法のスケイル・アーマーで受動防御9、防護点5。「財産/標準」の範囲内でも異様に固くなって非常にマンチキン仕様です。
 …ただですね?赤の月のリャノ信者が盾を両手に構えてがっちりガード体制!…というスタイル自体、絵的にもリャノの教義的にもどうなんだ?…と思いました。さすがに世界観無視にも限度があるだろう?と(笑) そこに「単調過ぎてツマラン」という理由も加わり、構想段階では真っ先に候補に挙がってましたが、早々に断念しました。
 結局、アルリアナ信仰を選択し、《浮遊》か《飛行》で飛びながら《飛ぶ剣》でミサイルのごとく槍を飛ばすという、現代戦闘機みたいな戦闘スタイルが美しい&世界観的にも一応通る(元々、原作アルリアナはシールドバトンでドヤ顔ダブル盾戦術を推奨してる信仰)と思い、それの再現になりました。

 …まあ、原作のシールドバトンは完全に産廃武器ですが。上のレポートにもあるように、両手にバックラーかスモールシールドを持つ方が、まだマシだよなぁ?(笑)


(シーダというキャラクターの問題点)
 いまいちパッとしないFEのキャラとして、初代FEのヒロインのシーダがいます。

 何がパッとしないって、性格がありきたりな理想の姫君すぎて、個性がないんですよね。唯一、個性的と言われるのが「謎の説得文」なんですが、これはあまりに現在のシーダ像からはかけ離れ過ぎていて、セリフとして吐かせるとかなり違和感を感じます…それは●天堂も同じのようで、最近はヘンな口説き落とし文を吐くシーダは登場しないようです。
 シーダのキャラクター像がいまいちボケてると断言できる最大の理由は、「出る作品ごとに声優がころころ入れ替わる」ことです―――キャライメージが固定されてるなら、こうも声優が頻繁に入れ替わるはずがないんですよ。やっぱ声って、キャライメージを決める上でもかなりのウェイトを占めますから。
 他作品で例えるならば、SEGAのPSO2のヒロインであるマトイの声優が、章ごとに全然別の人に変わる的な感じでしょうか。…もし実際それをやると、おそらくプレイヤー側から見るマトイのキャライメージが、全然固まらないと思うんですよ(笑)

 で、今回、彼女の相棒として出したイシュタルの方ですが、「聖戦の系譜」にしか登場しないにも関わらず、どの作品でも大体性格は一致しています。イメージが割とはっきりしている女性だからでしょう―――シーダみたいに、おかしなセリフもないですし。


(当サイトにおけるシーダの変遷)
 シーダの「キャライメージが固まらないヒロイン」の属性は、当サイトの管理人にもありました。

 まず、このサイトを立ち上げてまもなく「集団マンチキン」レポートに登場した頃のシーダは、現在の一般的なシーダ像とは大きく異なります―――実はこのシーダ、MMDモデルとして代用した「健音テイ」の性格を大きく引き継いでいて、現在の世間一般の人々が想像するシーダ像とは、大きくかけ離れていると思います。
 そうなった背景として、やはり昔の「作者によってイメージがバラバラだった時代のシーダ」があって、当時は超有名な「奇妙な説得文」(「その剣で私を好きにして…」を代表とする、説得にすらなってない説得文(笑))が一人歩きして、シーダの性格も「おしとやか」からはかけ離れた作品も結構あったんですよ。それが元で、「こんなのシーダじゃない!」的な性格になっちゃってます。というか、性格の下地はほぼ「健音テイ」です。

 そして、最初の「ヘンなシーダ」から数年後の現在。
 今回は原作に沿おうと思い、まずMMDモデルから一新して、シーダっぽい外見になるようにあれこれいじってそれっぽいものを作りました。顔も体も、探すのに結構苦労してます。
 性格に関しても、ようやく●天堂側の「シーダ像」が固まってきた感じだったので、それに従って不利な特徴を設定しています…とはいうものの、OVA版にはあった初代シーダの「おてんば」要素も残しておくべきだと思ったので(一応、騎士という体が資本のクラスなので)、ほんのわずかですが「健音テイ」要素(子供っぽい部分がそれ)も残しました。

 あと、身長に関してですが、シーダって割と身長が高い方だと思ってます(ゲーム中では数少ない女性の戦士です)。人物相関の立ち位置的にも「学級委員長」に近く、学級委員長が取る位置は、日本におけるヒロインの旧分類だと「チビ・デブ・のっぽ」のうち「のっぽ(高身長)」になるのがセオリーなので、そのようにしました―――ただし、日本のオタク界隈におけるヒロインの最高高度(笑)は167センチなので(日本人男性の平均身長が168センチだから)、シーダもそれに合わせて身長を設定しました。


(ユーザーによって復活したリフ)
 初代FEの最初のMAPで仲間になるキャラクターが僧侶リフです。ただし、当時はこのキャラ、全く人気がありませんでした…というか、初代FEはシステム的に欠陥があり、僧侶クラスは経験値を上げるのに「一方的に敵に殴られて耐えねばならない」という意味不明なシステムだったため、ただでさえ愛情がないとレベル上げできないのに、こんなお爺ちゃんキャラの育成なんてやってる人はほとんどいませんでした…直後のマップで、レナという美人司祭が加入しますし。

 ところが、その風潮はリメイクで一変します。
 SFC版で初代FEがリメイクされたのですが、その時、なんとリフは存在そのものを消されてしまったのです(村にいくと「きずぐすり」を渡されてしまいます―――リフはアイテムと同格となったわけです(笑))。初代であまりに人気がなかったと判断されたためか、真っ先に切られたわけですが、これは初代ユーザーにとっては思いのほかショックだったようで、以後、リフの名が叫ばれ続けます。
 そしてついに●天堂も折れたのか、今度はメーカーの側から謎の「リフ推し」が始まりました…同時期、「聖戦の系譜」で酷い設定にされたアーダンも推されまくられます。

 …なんといいますか、当時の●天堂はとにかく美形キャラを並べるのが好きで、イケメンor美女にしか人権を認めてない風潮がありました。それもかなり鼻に付くレベルで。「美しいキャラ=強い」「容貌が悪いキャラはやられ役=弱い」のがデフォルトでした。
 一方、それでも●天堂なりに「公平性」「現実味」を保ちたい意志からか、リフやアーダンみたいな地味で素朴でイケメンではなく、ステータス的にも全く使えないクズ属性キャラが必ず少数いました。「このキャラは成長率最悪だから、使うのは罠だよー?みんな気付いて~主に容貌で~」的なサインでしょうか?(笑)
 しかしこれ、現実世界にいきるユーザーたちには逆に同情を買ってしまったようで、全ての負担を押し付けられたリフやアーダンは、ネット上では常に持ち上げられ続けました。というか、そういう「ハズレキャラ」に対する●天堂の扱いがあまりに酷すぎたのが原因でしょうね…ほとんどイジメのレベルでしたし。

 何もかもマイナス要素を押し付けられるブサイクキャラ…それはちょうど、時代的に村八分された就職氷河期世代(現役ユーザー)の心にも、けっこう深く、割と深刻に突き刺さったんだと思います。やはり、何でも負担を負け組に押し付けて、少数精鋭主義で行こうとする日本人のやり方は、どこかしら問題があるのでしょう―――大半の負け組を「社会の敵」に回すわけですから。

 そして今、少子化という問題で悶え苦しんでますよね。
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