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■第17節 空の神兵 |
中世ヨーロッパにおいて、航空兵なる兵科は存在しなかった。 しかしファンタジー世界では、飛行の魔法を使って飛ぶ人間や、種族特性として翼を持ち、飛行可能な亜人種が存在する事が多い。 |
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当然ながら、そのような世界においては、現代地球とは少し違った形で、航空兵に近い存在がいるだろう。ルナル世界でも、ミュルーン、翼人を始めとする飛行可能な種族が存在し、彼らの種族の兵士は航空戦力として機能する。ここでは、そのような存在を「飛空兵」と呼ぶ事にする。 飛空兵の大半は、平常時から飛行可能な翼を持つ種族で構成されるのが普通であろうと思われる。なぜなら、呪文や魔化アイテムで飛ぶためには、高い魔術の素養が必要だったり、非常に高い「財産」レベルを要求されるため、部隊を形成できるほどの人数が集められないからだ。 ただし、数が揃えられないからといって「戦争で使えないユニット」とはならない。 現代地球において航空兵は戦闘機の乗るが、その戦闘機の性能によって戦力差が生じる。一般に、地球における戦闘機の性能は「世代」によって分類されるが、タイマン状態で下位の世代が上位の世代の戦闘機に勝つのは、一般に「不可能」とされる。これと同様の原理は、ルナル世界においても存在すると考えられる。 そこで、このレポートでは「ミュルーン飛空兵を超える性能を持つ戦闘魔術師」としての飛空兵を追求してみようと思う。 |
■状況 |
どこまで関連性があるかは判断が難しいが、まずは我々の世界の戦闘機について学ぼう。 |
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現代地球における戦闘機は、主に性能の格差に応じて「世代」という概念で分類されている。戦闘機の総合的な能力を見て、「明らかに明確な技術の差があって、1つ前の世代の戦闘機との戦いにおいて圧倒的勝率を誇る」部分で区切られている。 だが、厳密な基準があるわけではない。 |
■第1世代戦闘機 初のジェット推進戦闘機 |
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初期のジェット戦闘機。亜音速で飛べるため、それまでのプロペラ式の戦闘機より圧倒的な速度を誇った。まだエンジン製造の技術が未熟だったため、機種先端に吸気口(エア・インテーク)のある機体が多いのが特徴。 当時のレーダーは巨大でスペースを取ったため、通常の戦闘機には積んでおらず、プロペラ機と同じく目視距離で機銃を使ってドッグファイトを行った。 |
■第2世代戦闘機 超音速飛行とレーダーの標準搭載 |
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エンジン技術の発達により、マッハ1を超える超音速で飛べるようになる。吸気口が左右に分散され、全体的にスリムな形状になり、現在の戦闘機に近いフォルムとなる。 さらに、小型化に成功したレーダーを標準装備しており、元々は吸気口だった機種先端(ノーズ)にセンサー系全般を装備するのが、以後の戦闘機のスタンダードとなった。初期の赤外線誘導ミサイルなども実用化され、遠距離攻撃手段として装備される。 |
■第3世代戦闘機 レーダー誘導ミサイル |
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レーダー上での誘導可能なミサイルが実用化され、目視外の遠距離からのミサイルの撃ち合いがメインとなった。この時代の戦闘機は、飛行性能よりも兵器の搭載数が重視された結果、やや鈍重で大きなサイズのものが主流となる。 しかし一方で、近接戦闘用の機銃がなくなった事で、不意に敵戦闘機に接近されると何もできないといった状況がちょくちょく見られた。パイロットはミサイルに頼りすぎ、空戦技術を忘れてしまったのである。 |
■第4世代戦闘機 マルチロール化 |
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機銃の必要性が見直され、格闘戦を重視した超音速ジェット戦闘機が主流に戻る。なお、エンジン技術的にジェット推進による機動性の追求は、この時点でほぼ頭打ちとなる。 一方、各装備の小型化により様々な電子装置を積む事が可能となり、対空戦闘以外にも偵察・対地攻撃・対潜攻撃など、複数の任務をこなせるマルチロール化が進む。 第4世代戦闘機も幅があり、第5世代戦闘機が持つステルス性以外の部分を同レベルに合わせた「第4.5世代戦闘機」なるものも登場しており、現代地球における主力戦闘機は実質この世代である。 |
■第5世代戦闘機 ステルス性とセンサーの多様化 |
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レーダーから機体位置を隠蔽する技術が開発され、ステルス機能がない旧世代機に対し、常に先手を取れる優位性があるとされる最新鋭戦闘機。また、第4世代で獲得した超音速飛行能力に加え、レーダー以外のセンサー(赤外線など)も備え、相手を探知する能力が大きく強化されている。 ステルス性能にもランクがあり、尾翼などレーダー波を反射しやすい部位があると性能が落ちる(完全に見えなくなるわけではなく、またレーダーの至近距離だとさすがに映る)。しかし、そういった反射面を嫌って平面構成にすると、機体バランスを取るための尾翼などの部位がない事から、航空力学に反する形状になってしまい、電子自動制御で無理矢理バランスを取り続けたり、スラスターの推進力だけで強引に飛ぶなどといった無理な挙動になる(フライ・バイ・ワイヤ)。結果、運動性能がダウンするといった問題がある。 また、単純に「速度を上げるほどステルス機能が下がってしまう」ため、ステルスと超音速飛行が両立できない問題もある。平たく言うと「使ったら見つかってしまうのに、いつ超音速飛行を使えばいいのか?」といった、戦術的な要不要論が浮上してくるのである。 なお、ステルス機能は維持コストが非常にかかるため、先進国の経済力でないと保持し続けるのが難しい。そのため、大半の発展途上国は、この世代の戦闘機を保持していない現状にある。 |
■第6世代戦闘機 無人機との連携? |
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高度にネットワーク化された戦術情報を元に、単独の有人機が複数の無人機を従え、自分の代わりに偵察や囮役、支援攻撃を行わせるシステムが考案されている。無論、第5世代に獲得したステルス性能や高度な複合センサーも搭載が大前提である。 他にも、小型レーザー照射装置や迎撃弾を用いた能動防御システムの搭載や、無人機からもたらされる膨大な情報をAIに処理させ、パイロットの負担を軽減するシステムなど、様々な試みが考案されている。 2025年現在、この世代の戦闘機は各先進国で開発中の状況にあり、実際に上のようなシステムを搭載する事で第5世代戦闘機に圧勝できるかどうかは、まだ未知数である。 また、将来的には「完全に無人機だけで制空作業を行う」事も想定されており、第6世代は有人機と無人機の橋渡し的な存在なのかもしれない。 |
■置換 |
上記は、現代地球における戦闘機の話であるが、これをルナルの飛空兵に置き換えてみるとどうなるか。 |
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ルナルにおける飛空兵は、呪文運用における相殺合戦の歴史である。別に世代のような区分があるわけではないが、ここは現代地球の戦闘機の歴史に倣って、同じ形式で解説してみよう。 一応断っておくが、厳密な区分があるわけではない。 |
■第1世代飛空兵 マーセナリーの動員 |
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「数が揃えられる空中戦力」という事で、ミュルーンや翼人の傭兵(マーセナリー)による空軍形成がなされる。武装は槍、防具は軽量のライト・レザーなど。ほぼ白兵戦のみで戦う事になるが、軽装なので持久力に欠け、戦力として不安定。また、地上からの対空射撃に対して脆弱である 一応、《飛行》の魔化アイテムを使う事で、飛べない種族でもこれになる事は可能だが、高価な割に彼らと同程度の飛行性能しか出せないため、わざわざこの方法で戦う者は少ないだろう。 飛空兵1人あたりの装備が「財産/標準」以下で収まる範囲であるため、ルナル世界における空軍のほとんどは、この世代の飛空兵で数を補っている。 ●飛行の魔化アイテム 《飛行》 +$62,500 (魔術師のみ) |
■第2世代飛空兵 視覚強化呪文と自動装填武器 |
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《暗視》《鷹目》の呪文などを用いて視界を強化しつつ、空中で射撃を行う試みがなされる。両足が踏ん張れない状況で弓矢を引くことは困難と思われるので、射撃にはクロスボウや射撃呪文が利用される。 視覚強化に関しては、飛行生物は元々視力が人間よりも良い場合が多いため、資金節約のために呪文や魔化アイテムでのカバーを安いもの(例えば《赤外線視覚》の魔化アイテム(+$100))で代用したり、バッサリ省略する事が多い。 なお、クロスボウの「弦を引く」作業を《従者》の魔化で行う事で、使用者の腕力に依存しない高威力のクロスボウを使えるようになり、ミュルーンのような魔法が使えない&中途半端な性能の足しか使えない種族であっても、飛行中に装填して発射できるようになる。 ●暗視の魔化アイテム 《暗視》 +$1,790 ●鷹目の魔化アイテム 《鷹目》 +$10,000 ●石弾の魔化アイテム 《石弾》 +$10,000(魔術師のみ) ●自動装填式クロスボウ 《従者》 +$10,500 《連動》 +$1,790 上質クロスボウ +$600 (合計$12,890) |
■第3世代飛空兵 ミサイル・プロテクションの常備化 |
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高度な熟練(いわゆるマンチキン上げ)や《発電》の魔化アイテムを利用して《矢よけ》の呪文を常時維持する事で、地上からの対空射撃や、同じ飛空兵からの射撃を完封できるようになる。これにより、地上ユニット全般は飛空兵に対して有効な対抗策のほとんどを失う。 一方、同じ飛空兵同士では、昔の白兵戦主体の設計に戻したり、《矢よけ》の影響を受けない《踊る武器》が魔化された武器を飛ばしたり、命中判定を介さずに直接的に能力値抵抗で敵を無力化する抵抗呪文を利用する等、様々な手段でミサイル・プロテクションを回避しようと試みる。 なお、この辺りの世代から、習得魔法の制限があるミュルーンや翼人といった飛行種族のバージョンアップに限界がやってくる。特に抵抗呪文の魔化アイテムは、基本「接触のみ」のものが大半であるため、防衛強化はともかく攻撃手段の強化が魔化アイテムではフォロー不可能になっていくためである。 ●矢よけの魔化アイテム 《矢よけ》 +$10,000 《発電L1》 +$12,500 (合計$22,500) ●踊る武器の魔化アイテム (0.5kgの武器の場合) 《踊る武器》 +$25,000 最高品質大型ナイフ +$800 (合計$25,800) |
■第4世代飛空兵 高速飛空兵とエンジェル・ハイロウ |
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平常時はコストの安い《浮遊》や《空中歩行》でゆっくり移動し、戦闘時のみ《高速飛行》の呪文を用いるといった切り替え式の呪文運用を行う事で、膨大なエネルギーコストの調達問題をクリアし、既存の飛空兵を上回る機動性で戦闘を行えるようになる。 この機動性上昇により、移動力に難のある《踊る武器》(移動力5~6)を振り切る事が容易になり、残る有効な攻撃手段は、白兵戦武器とマンチキン上げした抵抗呪文のみとなる。 一方、司令部のオペレーターが《精神感応》の魔化アイテムでネットワークを構築し、司令部、各地の監視役、空挺兵の間で敵味方の位置情報の共有が行われるようになる。これにより、MAPレベルでの高度な連携戦術を取れるようになり、一方で通常の空軍は烏合の衆と化し、各個撃破により駆逐される事になる。 双月歴1095年におけるルナル世界の各国の飛空兵の性能限界は、おおよそこのレベルであると見てよい。 ●浮遊の魔化アイテム 《浮遊》 +$20,000 ●高速飛行の魔化アイテム 《高速飛行》 +$75,000(魔術師のみ) ●精神感応の魔化アイテム 《精神感応》 +$50,000 《発電L2》 +$25,000 (合計$75,000)(魔術師のみ) |
■第5世代飛空兵 ステルス能力の常備化 |
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主に魔化アイテムを利用して《透明》の呪文を常時維持する事で、目視距離にいても察知されなくなり、一方的に攻撃が可能となる。 透明な存在との白兵戦は難易度が高い行為であり、同格の戦士でまともに相手するのは難しい。また、聴覚判定に成功しておおよその位置が判明している場合でも、通常呪文だと見えない相手にかける場合は厳しいペナルティ(-5)が付くため、透明な飛空兵を相手にする場合、まずは《透明看破》の魔化アイテムが必須となる。 なお、第5世代飛空兵を用意できない場合だが、対抗手段である《透明看破》の呪文や魔化アイテムは比較的低コストなので、自国領を防衛するだけであれば、無くても全くの無理ゲーというわけではない。 また、《透明》を維持可能な魔化アイテムの作成は相当なコストがかかるため、そもそも数を揃えるのが困難であり、ユニット数の少なさから実際に行える作戦量は限定される。 現在のルナルでは、トルアドネス帝国などごく一部の大国が試験的に運用しているのみである。また、超英雄が個人レベルでこの性能に達しているというウワサもあるが、真相は定かではない。 ●透明化の魔化アイテム 《透明》 +$30,000 《発電L2》 +$25,000 (合計$55,000) ●透明看破の魔化アイテム 《透明看破》 +$10,000 《発電L1》 +$12,500 (合計$22,500) |
■第6世代飛空兵 オートマータによる多方向攻撃モード? |
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飛行タイプの高性能ゴーレムや「魔法の素質」が保持可能なエイリアス(複製人間)兵士を随伴させる事で、単独で多人数による多方向攻撃が実行可能になる。無論、それらには第5世代までの性能(高速飛行や透明化、ミサイル・プロテクション等)が標準装備されているのが普通である。 なお、ルナルはTL3の社会的に未発達な世界なので、全ての個人装備は基本的に「個人の所有物」として持参するのが普通である。そのため、こうした装備を個人で揃えるのはルール的にほとんど不可能であり、350cp以上の超英雄クラスの人材を登場させて、「後援者」や「仲間グループ」などの特徴を複数取得し、強引に個人資産額を超える資金を調達するといった「裏技」に近いものを使わない限り、ほぼほぼ再現できない。 よって、個人ではなく政府や組織といった法人が、各個人の軍備を配給するのが一般的な時代が到来するまで、戦争というジャンルにおいてこれが登場する事はないと思われる。 なお、銀の月の風の種族(翼人など)であれば、飛行系の元素獣を召喚・支配する事で、疑似的にこの世代の飛空兵が再現可能になる。ただし、術者やサーバントは第3世代以下の性能しかない。 |
■対策 |
「理想的な飛空兵」のキャラクターを作成する段階において、必要となる能力を「自身の能力として習得するか?」「魔化アイテムに任せてしまうか?」の二択でバランスよく備える事が大事である。 全てを「自身の能力」として習得しようとすると、特定呪文のマンチキン上げが複数必要となり、CP効率が著しく落ちるので実現性がない。かといって、「財産」によるフォローは「富豪」クラスの$100,000以内が限界なので、全てを魔化アイテムで補うのも不可能である。 よって、「どの能力をどの要素で補うか?」の効率性を求める作業となる。 |
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今回は、最新鋭である「第5世代飛空兵」を設計していこうと思う。 |
■維持が必要な呪文は全て魔化アイテム任せ まず「財産/富豪」(50cp 資産額$100,000)の獲得は必須である。そのため、今回は150cpのウィザード種族キャラクターを想定する(100cpではさすがに限界があるので)。 上記の考察で紹介した必要能力の中で、魔化アイテムに投げてしまいたい能力は「常時維持する呪文」の内、維持コストが2以上の呪文である。具体的には《矢よけ》《透明》《透明看破》であるが、《矢よけ》と《透明》は保護機能としてはダブっている部分が多いように思えるので(いわゆる過保護)、コストカットのために《矢よけ》は切る事にする。 また、状況考察では抜け落ちているが、《透明》は光学探知こそ誤魔化せるものの、《超音波視覚》の呪文によるアクティブ・ソナーに対しては無防備である。《超音波視覚》は、ウィザードが目を物理的にやられた場合の「第二の視覚」を得る呪文として非常に有用なので(音で「視る」ため、目は必要ない)、こちらの呪文で探知されないようにソナー対策もした方がいいだろう。そこで、《忍び足》の魔化も加える事にする。 ●《透明》《透明看破》が魔化された魔法のヘビー・レザー [メイン能力] 《発電L2》 +$25,000 《透明》 +$30,000 《透明看破》 +$10,000 《忍び足》 +$12,500 [補助能力] 《強化L1》 +$50 《防御L1》 +$100 《軽量化》 +$100 [アイテム本体] ヘビー・レザー(7.5kg) $350 ルナル世界はマナ濃度が「密」であるため、《発電》1レベルにつき2点のエネルギーが軽減される。で、《透明》の呪文の維持コスト3で、これを術者自身の呪文で維持しようとすると、25レベルまでマンチキン上げ必須なため、さすがにCP的に苦しい。そのため《発電》2レベル(4点軽減)の魔化で維持を行うようにする。 本来ならば、《高速飛行》も魔化して維持コスト4という膨大な必要コストを無効化したいのであるが、困った事に《高速飛行》の魔化は単品で$75,000もかかってしまい、《発電L2》と併用すると「財産/富豪」でも価格オーバーになってしまう。 この制約があるため、第4世代の説明にある「必要な時のみ《高速飛行》を使い、平常時は《浮遊》で済ませる」必要が存在するのである。無論、《高速飛行》の呪文は術者自身が使う事が前提となる。 |
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■防寒対策 …考えてみればだが、高空を長時間飛ぶのだから、防寒装備も必須なはずである。惑星大気圏内では、上に行くほど空気の密度が下がり、地面からの熱放射の影響が小さくなるので、高空に行くほど寒くなるというわけである。なお、日本の気象庁のデータによると、「高度100m上昇ごとに平均0.5℃の気温が下がる」らしい。 また、風が吹くと体感温度が下がる。一般に、風速が1m/s増すごとに、体感温度は1℃低下すると言われる。 飛空兵の場合、平常時は《浮遊》でゆっくり移動する(時速10kmほど)ので、そこまで気にする必要はなさそうだが、低速飛行でも自然の風が強い状況では、やはり体感温度は下がるだろう。また、高速飛行中は移動力40(時速144km)まで加速するため、相当冷え込むはず。そう考えると、やはり防寒対策は必要だろう。 これらの熱計算を厳密にする必要性はないが、何かしらの防寒対策をデータ上でも再現した方がいいと思われる。そこで、まだ「財産」に余力があるので追加で《防冷》と《雨傘》の呪文を魔化する事を考案する。なお《雨傘》は、雨や雪が体に当たるのを防いでくれる便利な呪文で、魔化の価格も$100と非常にお財布に優しいので、一般冒険者にもお勧めの一品である。 ●防冷と雨傘の魔化アイテム 《防冷》 +$20,700 《雨傘》 +$100 …かなり財政が厳しくなるが、作戦上、雪山などの上空を飛ぶ可能性もあるため、やはり対策しておいた方がいいだろう。 ■インフラビジョン 夜間戦闘に備えて暗視能力も欲しい。ただ、《暗視》の魔化は少々高価なので、ここは安価な《赤外線視覚》の魔化を使う事にする。そもそも今回は「制空戦闘機」を目指しているので、敵の位置さえ分かれば地形の細部まで分からずとも問題ない。赤外線視覚で十分だろう。 ●赤外線視覚の魔化アイテム 《赤外線視覚》 +$100 [総合性能] ヘビー・レザー($350 7.5kg 各種魔化合計+$98,650) 受動防御3 防護点3 …そろそろ財産がカツカツになってきた。 ■魔術具と維持呪文によるペナルティの計算 高価な「アクセサリ」($50 軽い)を魔術具にして(+$150)、二つ用意する(計$400)。ルナル世界のウィザードは、魔術具1つにつき、呪文の維持1つを〈天使〉に任せられる(他の呪文使用時のペナルティを1点軽減する)ので、使い魔の所持は諦め、魔術具の方を目一杯所持しておきたい。 なお、作戦行動中に維持しないといけない呪文は、《浮遊》《透明》《赤外線視覚》《透明看破》《防冷》《忍び足》の6つ。 この中で、《赤外線視覚》《透明看破》《防冷》《忍び足》は、《発電L2》によって維持コストだけでなく発動コストまでゼロになっているため「常動型」と見なされる。常動型と化した魔化アイテムに込められた呪文は維持しているとはみなされない(術者の意志でON/OFFするだけ)ため、ペナルティ計算に入れずに済む。そして、魔術具2つでさらにペナルティを2点軽減できるため、残り2つ(《透明》と自前で使う《浮遊》)のペナルティも相殺できる。 よって、「維持している呪文」は実質0個。他の呪文を使う際のペナルティなしの状態である。これだけ余裕があるのなら、何か別の呪文も別途で維持しても良いだろう。 |
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■作業用パワーストーン 《高速飛行》の発動コストは8で、熟練(15レベル以上)による軽減を考慮すると、おそらく7だろう…さすがにこれを体力で支払うとぶっ倒れてしまうため、パワーストーンでのコスト軽減を図る。 理想は1日で回復するパワーストーン2点を、内蔵型に切り替える事で4点のエネルギーを引き出すようにし、これを使う事で呪文の発動コストを3にまで軽減できるようにすることだろう。 なお、内蔵型にするための魔化アイテムは、魔化コストが非常に安い《測量》の呪文の魔化アイテムがお勧め。実用性を考えると、《測量》の呪文は標的の長さや重量などを知る事ができるため、単なる「内蔵型にするためだけの」アクセサリとしてだけでなく、普通に戦闘ユニットの実用を兼ねた有用なアイテムと言える。 ●2点の内蔵型パワーストーン付き観測アイテム アクセサリ本体+$50 《測量》魔化+$50 内蔵型パワーストーン2点+$300 (計$400) そして、残り僅かな所持金で「治癒」エリクサーを1つ購入。「何でエリクサー?」と思うかもしれないが、「治癒」エリクサーは負傷していない状態で飲んだ場合、疲労点が2D点回復するという強力な効果があるため、必要な維持呪文を全て使った直後に飲んで、出発前の疲労点を即時回復するために使いたいところ。 ■《凍傷》25レベル 攻撃手段その1。 透明状態で位置を知らせずに中距離から攻撃する最高の手段。25レベルにしないと戦場では役に立たないため、完全にマンチキン上げするしかないのだが、どうせ第5世代飛空兵自体が量産できるようなユニットではないので、量産化のための低コスト設計とかを気にする必要はないだろう。 ■《音噴射》15レベル以上 〈呪文噴射〉15レベル以上 攻撃手段その2。 上記の《凍傷25》は、基本的に「受け身」で使う事を前提としている。具体的に言えば、「相手が射程内に飛び込んで来たところで、自分のターンの冒頭に発動する」形になるため、逆に「自分から移動して相手の近接距離に飛び込む」場合、先手で使う事ができないという弱点がある。 そのため、自分から攻撃を仕掛けて先手を取りたい場合、必然的にこちらを使う事になる。選択肢としては《火炎噴射》も入るが、呪文レベル15で維持するとなると、一撃必殺の可能性がある《音噴射》の方が、同格の飛空兵と対峙する場合は有用だと思われる。 なお、〈呪文噴射〉技能が15レベル以上要求されるのは、飛行中の戦闘ルールによる縛りのせいである。飛行中に白兵武器技能を使う場合、15レベルに満たないと、ただでさえ低い命中目標値にペナルティが加算されるというルールがあるため、まともに攻撃手段として使うつもりなら、15レベルにするのが基本である。 |
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■爆撃という選択 「制空戦闘機」に徹しても良いのだが、敵を蹴散らしたついでに敵陣地への攻撃する「戦闘爆撃機」としての設計を考えるのであれば、具体的な対地攻撃手段として以下のものが考えられる。 ①《火炎》と《火炎変化》で火災発生 《火炎》で1へクスの炎を生み出し、《火炎変化》で動かしまくる。万全を期すならば《聖火》の呪文がいいだろう。布や木造で作られた陣地が標的ならば、大規模な火災を起こす事が可能である。 文化圏にもよるが、ルナル世界の一般的な国家は中世ヨーロッパの模倣なので、木造建築が主流のはずなので、十分な火災ダメージを期待できるだろう。 なお、絵的に派手さを求めるなら《爆裂火球》という選択肢もなくはないが、家屋破壊という観点ではコスト的に非効率なので、あくまで対人戦用と割り切った方が良いだろう。 ②《地震》の呪文による陣地破壊 この呪文は、目標範囲までの発動ペナルティ修正が距離(1m毎)の20分の1で決まるので、割と遠距離からかけられるというメリットが存在する。例えば、100メートル先からかけても-5修正で済むので、安全に陸上の陣地攻撃を行うにはうってつけの手段と言える。本格的な「爆撃機」を演出するならば、この呪文がお勧め。 問題はコストの高さで、1へクスに「強震」レベルの地震を使うだけでも8点の消費コストを要求される。ルールブックによると「部分的にかけただけでは家屋を破壊できない」とあるのだが、1へクスでも1分間も同じ場所を揺さぶれば、地続きの部分も当然揺れるだろうし、家屋の方も倒れずに済むとは到底思えないので、効果範囲が小さくても十分有効のように思える(「強震」の場合)。最終的にはGMの判断に委ねられるだろう。 ただ、やはりコストが大きすぎるので、パワーストーンの併用が必須となるだろう。 ③《嵐》の呪文による艦船攻撃 ②の手段は陸上では有効だが、海上ではあまり意味がない。そこで、船舶などを攻撃する手段として《嵐》を拡大してかけるのが有効となる。 主に、荒波発生により船体が転覆したり、船体内部に浸水するのを狙っていく事になるが、マストにかけられている「帆」の部分を切り裂く事で、航行不能に陥らせる狙いもある。 …以上の呪文の習得に必要なCPは、《凍傷25》を切って獲得すればよいだろう。 |
■サンプル・キャラクター |
以上の理論により、作成されたキャラクターが以下である。 |
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【基本設定】 トルアドネス帝国ペテルトルア公国パルマ市の宮廷魔術師で、領主アリサを守るために宮廷魔術師長ルツが設立した魔術師団に所属する男性です。ごく小規模の魔術師団ですが、腕の良いウィザードが揃っています。 彼は戦闘に特化した戦闘魔術師であり、特に空戦術に優れています。パルマ市が保有している固有戦力「空挺SOC」(AirShop Sector Operation Center)の中核戦力として期待されています。 【設計思想】 魔化アイテムの支援を受けて、膨大な数の賦与呪文を維持しつつ、超高速飛行で空中戦を行うスタイルです。維持呪文は以下のような手順でかけます。 ●出撃時 1)《透明看破》(目標値15/MP0)《防冷》(目標値15/MP0)《赤外線視覚》(目標値15/MP0)《忍び足》(目標値15/MP0) この4つは魔化アイテムに付与された呪文で、しかも自家発電によって発動コストもゼロになっているため「常動型」として扱われ、「維持」すら必要ありません。最初にスイッチONして効果を得ます。 得られる効果は「透明なものを見る」「防寒効果」「赤外線視覚」「静粛性(〈忍び〉+3)」です。 2)《透明》(目標値15/MP1) これも魔化アイテムに付与された呪文ですが、発動コストが発生するため維持せねばなりません(維持コストはゼロなので効果時間は永続にできます)。ただし彼は魔術具を2つ所持しているため、維持を〈天使〉に任せる事ができ、実質「無料」で維持できます。得られる効果は「透明化」です。 3)《音噴射L1》(目標値15/MP0)→《浮遊L1》(目標値16/MP1)→《韋駄天L1》(発動修正-1 目標値15/MP1) ここまでで、維持呪文の個数は実質ゼロで、まだ魔術具による負担軽減特典が1点残っています。ここで、上記の順に呪文を唱えれば、高い目標値を保ったまま各呪文を発動可能です。これらは全て、自前で習得している呪文です。 得られる効果は「ソニックブレード展開」「飛行状態」「移動力とよけ+1」です。ただし、《韋駄天》による移動力上昇効果は、《浮遊》や《高速飛行》による飛行速度に影響しません。 この時点で、維持している呪文の個数は2つです。他の呪文を使う際、-2のペナルティが発生します。 4)「治癒」エリクサーを飲む この時点で2点疲労しているはずなので、「治癒」エリクサーを飲んで疲労点を回復して下さい。ケチると戦闘開始時の《高速飛行》発動後に疲労点が3以下に突入し、「よけ」が半減してしまいますので、ケチらず飲みましょう。 ●戦闘開始時(維持呪文によるペナルティ-2) 1)《高速飛行》(発動修正-2 目標値15/MP7) 戦闘開始時に使います。この時点で2つの呪文を維持している扱いになっているので、発動に-2のペナルティが発生します。目標値15(成功率95%)なので、よほど不運でない限りは1発で発動するでしょう。 コスト7点のうち4点は「作業用パワーストーン」(内蔵型2点のヤツ)から引き出します。この時点で、維持している呪文の個数は3つです。 2)《凍傷》(発動修正-3 目標値22/MP0) 戦闘時のメインウェポンです。基本的には受け身で動き、敵が至近距離に飛び込んで来たところで自分のターンの冒頭時に食らわせます。生命力抵抗なので、同じウィザード相手ならまず入るでしょう。 3)《音噴射》(命中判定15) 戦闘開始前に発動しているはずのソニックブレードです。命中判定は目標値15なので、よほどのことがない限りは命中するはずです。《凍傷》で倒せなかった場合の追撃に用います。 パワーレベルは1でしか発動してないと思われますが、同業者のウィザードであれば生命力は低いはずなので、この威力でもだいたい一撃で落とせるはずです。 4)《瞬間回避》(発動修正-3 目標値13/MP1) 万が一、敵から白兵攻撃を受けた際は、まず「後退よけ」を実行して下さい。《韋駄天》により「よけ」が1点上昇しているのを忘れないように。 相手が全力攻撃を選択していて、2撃目が飛んできた場合、あるいは《音噴射》など受動防御が利かない攻撃が飛んできた場合、これを使って回避します。使用後は1点疲労し、〈身体感覚〉技能に成功しないと次のターンは能動的な行動がとれません。 〈身体感覚〉技能は10レベルしかないため、次ターンの行動可能確率は50%しかありません。そのため、これによる回避行動は最終手段だと思って下さい。 |
■実戦 |
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トルアドネス帝国を構成する公国の1つ、ペテルトルア公国。その公都ペテルトルアの南側に位置する港湾都市パルマで先日、奇妙な領空侵犯事件がありました。 (レポート第13節「不落のファンタズム」参照) スカウト(偵察)の網にかかり、《追跡》の呪文で直接監視されているのに、その座標にミュルーン傭兵隊が急行したところ、侵入者の姿が全く見当たらないという、何とも奇妙な案件でした。 |
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当初は幻覚魔法を用いた何らかの工作と思われましたが、スカウトが常駐する監視塔の1つにメンテナンスに来ていた民間の魔術師が、侵入者追跡中のミュルーンがたまたま上空を通過するのを目撃していました。 彼は、監視塔の水道管に亀裂が走ってないかを調べるため、《超音波視覚》の呪文を使用して中を覗いていたのですが、飛翔音に気づいて上空を見上げた際、2体のミュルーンの背後にステルス化した体格の良い女の人影が張り付いて飛行しているのを目撃します。それは、光学的には明らかに透明でしたが、エコー・ロケーション(超音波の反射による地形把握)に対しては全く備えがなかったため、はっきり見えたわけです。 民間の補修業者の魔術師は、最初は見間違いだろうと思って特に報告しなかったのですが、この案件のためにパルマ市のガヤン尋問官に引っ張り出されて事情聴取された際、その事を思い出し、正直にその事を伝えます。 その後、彼は《精神探査》による記憶の精査を受け、その時に見た映像記憶部分だけをそのまま魔導兵器『ゲヒルン』に、幻覚映像データとしてコピーしました。今、領主アリサが見ている色のない形状だけ映し出されている映像がそれです。 |
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宮廷魔術師長ルツは、今回の事件を「透明人間が引き起こしたケース」と想定し、実際に何が行われていたのかの仮説を立てました。 こうして、「ゼクス共和国はパルマ市の空挺SOCがどのようなシステムで動いているのかを、ステルス偵察兵による強行偵察によって調査しようとした」事実を、ほぼほぼ正確に突き止めました。 これに対するルツが考案した対策は単純で、「同じステルス飛空兵を用意する」でした。 現在、パルマ市が配置している監視塔には、《追跡》の呪文を習得したペローマ神官と、《思考転送》の呪文を習得したサリカ神官を1セットで配置されており、監視塔は侵入者を見つけると、ペローマ神官が対象に《追跡》の呪文をかけます。 続いて、隣にいるサリカ神官が《思考転送》の呪文で、本部である空挺SOCのオペレーターに連絡を入れます。連絡を受けたオペレーターは、《精神感応》と《発電L2》が魔化されたアイテムを装備しており、これを使って標的を追跡中のペローマ神官との間にテレパシーによる双方向通信を確立し、現在地の情報を受け取り続けるという仕組みになっています(《発電》により発動コスト・維持コスト共にゼロになっているため、好きなだけネットワーク参加者を増やせ、好きなだけ接続状態を維持できます)。 この高度な空域監視システムを、パルマ市では「エンジェル・ハイロゥ」(古代神聖語で「〈天使〉の輪の意味)と呼んでいます。 |
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監視塔は帝国の南の国境ラインに一定距離間隔で配置され、強固な監視網を形成しているのですが、ルナル世界における神官(信者Lv2)クラスの人材は、100人の信徒に1~2人といった割合なので、希少価値の高い人材であり、非常に予算がかかる仕組みです。普通の国家でも、予算的になかなかきついものがあるのに、たった1都市でそれを形成するなど、TL3の世界の財力では普通は無理です―――パルマ市は、邪竜封印の特命を帯びた英雄領主を始め、かなり特殊な存在だと思って下さい(帝国本土から免税特権を与えられているのに加え、遠回しに皇室の支援(飛空艇の貸与など)まで受けています)。 そのようなギリギリの財政状況ですから、これらに加えて《透明看破》を20レベル以上で習得した非常に特殊なガヤン神官orウィザードをたくさん雇用するとなると、さすがにパルマ市と言えども実現困難です(ただ《透明看破》を習得しているだけではダメです―――持続時間が1分しかない呪文なので、常時維持し続けられる人材(維持コスト2なので呪文Lv20以上)でないと見張り業務には使えません)。 そこで、財を集中して強力な個人を用意する事で対抗します。そもそもステルス飛空兵などといったものは、そう簡単に数を揃えられるものではありません(透明になれるというだけではなく、その状態を常時維持せねばならないからです…マンチキン上げして《透明25》にするか、《透明》と《発電L2》を魔化したアイテム(「財産/富豪」(50cp)が必須)を用意せねばなりません)。そして、そのように登場頻度が低い脅威に対し、全体の質を上げて対抗しようとするのは、さらに非効率です(上記の特殊な人材か、《透明看破》と《発電L2》が魔化されたアイテム(「財産/富豪」(50cp)が必須)を所有するペローマ神官を、各監視塔に配備せねばなりません―――世界観的にほぼ無理ゲーです)。 なのでこういう場合、こちらも同様の人材を用意して、ステルス飛空兵の警戒と対処に特化した高級人材で対抗する方が、結果的に低コストで済むわけです。 |
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第5世代飛空兵であるアルフレットは、帝国とゼクス共和国の国境付近を試験飛行中、少しだけ越境して巡回飛行していたミュルーンの傭兵たち(4名)を発見しました。世代分類上は第1世代飛空兵です。 アルフレットは実戦経験を積むために、攻撃を仕掛けます。距離200mの地点で《高速飛行》を唱え、接近を開始します。 ■ミュルーン傭兵(50cp) (モンスター表記) 4名 体力:9 敏捷力:14 知力:10 生命力:10 移動力:6/10(飛行) 能動防御:よけ6/うけ8(格闘11)/とめ- 受動防御/防護点:2/2 体重:28kg 大きさ:1へクス 攻撃/スピア(長さ1-2):技能レベル15/刺し1D+1 攻撃/クロスボウ(抜撃12 正確さ4 射程180):技能レベル14/刺し1D+2 攻撃/格闘キック(長さ1):技能レベル13/叩き1D 特殊:器用な足、戦闘即応、滑空15、荷重飛行12 アルフレットは《透明》と《忍び足》の呪文により、ステルス状態になっています。 ガープスのルールでは、これらを使用した事による〈忍び〉技能への具体的なボーナスは、《忍び足》以外は規定されていないのですが、当サイトのハウスルールでは「光学的に見えない(透明など)」+4、「音が聞こえない(《忍び足》の呪文など)」+3、「匂いが匂わない(《消臭》の呪文など)」+1としています(対象は人間基準)。アルフレットは「見た目」と「音」を隠蔽しているので、+7修正を得ています。 〈忍び〉技能に+7修正を得た(目標値17)アルフレットは、背後から傭兵隊に忍び寄ります。ダイス目9で8成功―――この時点で、知力10の傭兵隊は見破れません。 |
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アルフレットは奇襲を仕掛けます。ミュルーンたちは油断している事もあり、GM(管理人)はこれを「完全な不意打ち」として扱いました。 アルフレットが自動的に先行となり、ターン冒頭に《凍傷》で桃ミュルーンを攻撃して9ダメージ。続く自分の行動で黄ミュルーンに対して全力攻撃(2回攻撃)。黄ミュルーンはまともに回避行動がとれず、ソニックブレードは命中。生命力-1判定に失敗し、一撃で気絶してしまいます。 続くミュルーン傭兵のターン。 傭兵たちは「戦闘即応」を持っているので、「立ちすくみ」は起こらず、最初から不意打ちによる精神的朦朧状態から回復判定が行えます。この判定は、「戦闘即応」があると+6修正があるため、生き残り3名(緑、赤、桃)は全員判定に成功し、行動を行います。 傭兵たちが取った行動は、「とにかく全力移動して互いの距離を取る」でした。3名とも別々の方向に全力で移動し、見えない敵から一網打尽にされる事を回避しようと試みます。桃ミュルーンもまだ生きているので、ふらふらと飛びつつも移動力半分(5m)で距離を取ろうとします。 |
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第2ターン目。 アルフレットはターン冒頭に《凍傷》を発動。瀕死だった桃ミュルーンにとどめを刺します。 そしてターン行動として「全力攻撃(2回攻撃)」を選択。飛行中の全力攻撃は、移動力の半分まで進んでから攻撃を行えます。ちょうど距離20メートルにいたリーダー格の緑ミュルーンに突撃。 透明のキャラクターから攻撃を受けた場合、「聴覚判定-2」に成功すれば、-4修正で能動防御可能です。しかし、アルフレットは《忍び足》の呪文を維持していることから、さらに-3修正で「聴覚判定-5」を要求します。判定は失敗。 ソニックブレードに対してロクな防御が行えず、緑ミュルーンはブレードの一撃を受けて生命力判定-1に失敗。こうして3体目のミュルーンが倒されます。 透明な敵に対する対処法がない生き残りの赤ミュルーンは、とにかく必死で全力飛行して距離を取ろうとしますが、《高速飛行》の呪文で移動力40に達している透明な存在に対し、逃げ場がありません。 4ターン目には追い付かれて、ソニックブレードで貫かれてスタン抵抗に失敗。 アルフレットの勝利です。 世代が4つも下回る飛空兵に対し、第5世代飛空兵のアルフレットは反撃を貰う事もなく圧勝でした。国境警備に雇われたゼクス共和国所属の傭兵ミュルーンたちは、何が起こったのかもわからぬまま全滅しました。 |
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…世代間の性能格差は、上記のレポートで十分証明できたと思うので、今度は同格の第5世代飛空兵と交戦を開始します。 敵は、ゼクス共和国で最も盛んなアルリアナ信仰の高司祭で、トルアドネス帝国の空挺SOCに対抗するため、新たに設立された『天空の戦女神』と呼ばれる軍人階級の女性兵士です。名前をシリューといい、役職通り飛行戦闘に特化しており、アルフレットと似た性能を誇ります。 魔化アイテムも似たものを装備しており、《透明》《透明看破》を常時維持できるように《発電L2》を始め、高度な魔化が施されています。ただし、双子の月信者は習得呪文に限界があるため、ウィザード・キャラクターほど細やかに要件を満たせません。それでも一応、《高速飛行》を自力習得可能なアルリアナ高司祭であれば、辛うじて第5世代飛空兵の要件を満たせたりします。 (注:アルリアナ高司祭が《高速飛行》を習得可能なのは、当サイト独自の改変ルールによるものです。原作ルールでは、この呪文を習得可能な双子の月信者はいません)。 今回は、彼女を相手にしてみましょう。 |
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最初の3ターンはお互いに《高速飛行》を集中・発動するため、ターン数に数えない事にします。 高速飛行状態に入った二人は、互いの距離を詰めるために前進します。ただし、迂闊に全力飛行で前進すると、敵にとって格好の攻撃タイミングを与えてしまうため、攻撃範囲ギリギリのラインを陣取りました。 魔道士アルフレットの攻撃手段はレベル25の《凍傷》と、パワーレベル1(長さ1)で維持し続けている《音噴射》のソニックブレードです。 《凍傷》の方は自分のターンの冒頭に使うわけですが、ターン冒頭時に相手が既に良い位置にいてくれないと使えません。また、ソニックブレードは射程が短く、1回の移動でまともな命中目標値で攻撃可能な位置まで接近せねばなりません(全力攻撃で20メートル移動可能なので、少なくとも21へクス以内が理想)。 このように、アルフレットは攻撃手段が豊富なのですが、いずれも相手の方から良い位置に飛び込んでくれないと使いにくい状態であり、結果として待ち伏せのために守勢にならざる得ません。 一方、アルリアナ高司祭の飛空兵シリューの攻撃手段は、魔化アイテムに封じられた《音噴射》しかありません。 ただし、《発電L2》により強力なパワーアシストが受けられるため、なんと最大のパワーレベル4(長さ4)で維持し続けられます。彼女にとっては、自身のターン時に24ヘクス以内に敵がいれば、とりあえず全力攻撃で距離を詰めてソニックブレードで攻撃する事ができます。白兵武器を使う場合、自分から斬りに行かないと使う機会が乏しいため、結果として積極的に攻勢の動きをせねばなりません。 ―――以上から、両者の思惑が一致する距離はアルフレット『自分が最初に待機状態になり、続く相手の手番で全力攻撃を選択して飛び込んでくれる距離』、シリュー『相手が1回の手番で攻撃できず、なおかつ自分は全力攻撃すればギリギリ1回の手番で攻撃が可能な距離』の双方の条件が満たされる距離ということになります。 こうして、第1ターン目に相対距離が24メートルとなりました。 |
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上で書いた通り、アルフレットの戦術は「相手に先行を取らせ、攻撃を捌いて返す刀で一刀両断」というものでした。一応、望み通りの展開にはなりましたが、正直かなり際どい戦術で、判定1つでもミスったら即死でした。 ――――距離24メートル。 先手アルフレットは「待機」を選択。続くシリューは、全力攻撃で「二回攻撃」を選択。高速飛行中なので、全力攻撃開始時に移動力の半分(20メートル)だけ前進可能です。20メートル飛行した後、4へクス先にいるアルフレットにソニックブレードを叩きこみます(パワーレベル4なのでギリギリ届きます)。 最初の一撃は、「後退よけ」で回避を試みます。《音噴射》の回避には受動防御が一切無効であるため、飛行による恩恵(よけ+2)や維持中の《韋駄天L1》の恩恵を足しても、目標値8しかなく、後退防御を含めても目標値11(成功率62%)…かなりの冒険です。 ――――判定は成功。 続く2撃目ですが、もう後退防御が使えないため目標値8しかありません(成功率26%)。さすがにこれは無理ゲーなので、最後の砦とも言える《瞬間回避》を使います。あれこれ大量に呪文を維持しているため、呪文を使う際には-3修正がかかっており、最終的な《瞬間回避》の目標値は13でした(成功率84%)。 ――――これも何とかギリギリ成功(ダイス目13!)。 テレポート後は〈身体感覚〉技能判定に成功しないと、1ターン行動ができなくなります。ただし、アルフレットは「待機」行動を取っていたので、仮に失敗しても反撃ができなくなるだけなので、これを心配する必要はありませんでした。 目標値10(成功率50%)の〈身体感覚〉判定には成功しましたが、回避によって2へクス後退してしまったため、反撃行動で踏み込んでも(3m前進)、シリューにソニックブレードが届きません(パワーレベル1なので長さ1しかありません)。 そのため、続く自分のターンで決着を付けようと試みます。 |
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第3ターン。 ここで躊躇する意味はありません。次、同じ2回攻撃を受けて、2回とも回避できる可能性は決して高くありません。なので、全てをこめて全力攻撃/2回攻撃を選択。 1回目のソニックブレードの攻撃が命中します。相手は直前に全力攻撃を選択していたため、ロクに能動防御はできません。シリューは、《音噴射》に対するスタン抵抗(生命力-1判定)に失敗。気絶し、(まだ浮遊系呪文の持続時間中なので)姿勢を崩した状態で風に流されていきました。 アルフレットの勝利です。 …かなり際どい勝負でしたが、辛うじて同世代の飛空兵に対して勝利しました。 しかし、二回目の《高速飛行》の使用はコスト的に厳しいため、連戦ができません。本当はこのハイレグアーマーの女を連れ帰って、尋問したり身代金を請求したりしたいところでしたが、さすがに小柄なアルフレットは、自分とほぼ同じ体格の女を抱っこしたまま本部まで帰り着く自信はありません。なので、まだ《高速飛行》の効果が持続している間に、可能な限り国境から離脱しました。 |
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[編集手記] リアル地球の国際情勢のタイムリーなネタを扱おうと思い、ずっと前から構想はしていた「ルナルにおける軍としての航空戦力」を正式なレポートとして作成してみました。 3年前から開始されたウクライナ侵攻ですが、2025年6月現在も進行中。完全に戦時経済体制に入ってしまったロシア政府は、戦争を止めようにも止められない状態にあるようです(止めたら経済破綻する)。 あと、そもそもロシア政府はウクライナを単独の政体とは認めておらず、「地方の反乱軍ごときに東側最大の核保有国が降伏する死ぬほど恥ずかしい醜態」に耐えられないのでしょう。 …プライドが高すぎて現実を直視しようとしない大国の末路といったところでしょうか。 しかし現状、既に北朝鮮や中国、イランの支援に全面的に頼ってる状態なので、実質ロシア単体では経済的に滅亡していると見てよいです。仮に今、停戦したところで、戦前より外国人労働者にインフラ全般の運営を頼っていた国でもあるため、これ以降、ロシア人単体の国として復興する事は二度とないでしょう…おそらく。 この状況は東側陣営だけでなく、西側陣営でも見られます。 西側最大国家アメリカが、おかしな大統領を選んだ事で、どんどん壊れています(現在進行中)。新大統領のトランプ氏は、まるでルナルにおけるシャストア信者のごとく(笑)、ころころと態度を変え…変えすぎて、国際信用まで失いました。結果、米国の株価全体が大暴落を引き起こし、富裕層の多くは何もしてないのに資産を大きく減少させました。 内政でも一貫性がなく、思いつきで場当たり的な破壊政策を行った結果、ついに内乱に近い状態にまで発展しています。ただでさえ治安の悪い国なのに、これから先、正常な国家を維持するための「まともな人」は生き残れるのでしょうか…。 このトランプ氏の当選と無謀な政策に関して、どうもロシアの工作員が大きくかかわっているようです。しかし、一戦も交える事なく相手陣営最大の国家をここまで弱体化させるのは「ある意味すごいな?」と、ロシアの諜報力に素直に感心します。 …まぁ、管理人個人は「目糞ハナクソの争い」にしか見えないんですが(笑) 管理人個人のこれまでの人生経験からすると、おそらくこれから先の地球文明では、「大国」という概念そのものが不要なんじゃないか?と何となく感じています。 今まで経験した対戦系ネトゲの仮想空間内では、最初は大規模勢力が形成されるんですが、やがて「大勢力がいると勝負する前から結末が分かっていて面白くもなんともない」状況に陥るんですよ。 そして大勢力は、敵味方の双方から邪魔者扱いされ、居場所がなくなります(どうせ負けるのが分かってて勝負してくれるもの好きなユーザーなんてほとんどいません)。あるいは、大規模勢力がゲーム内世界を完全制圧した時点で、対戦相手(手ごろなやられ役)がいなくなって試合そのものが成立しなくなり、サービスそのものが停止してしまいます(どっちも実際に経験した事があります)。 現在の地球における国際情勢は、おそらく「ゲーム終盤」に差し掛かっているのでしょう。果たして人類は、リセットボタンを押して、新たな世界情勢という名のゲームを1から再スタートする事ができるのでしょうか。 …リアル情勢の世間話はこのくらいにして本題。 (国際情勢における航空戦力) 現在の地球における軍事力において、航空戦力は大きなウェイトを占めます。無論、最終的に敵本拠地を制圧するには陸軍、もっといえば歩兵が必須なので、戦力のベースとなるのは陸軍に違いありません。 しかし、陸軍が敵の本拠地に至るまでには、やはり海軍と空軍が必要です。特に空軍は、敵国と地続きの環境でも必須であり、まず空軍力がないと勝負になりません。陸軍戦力だけで敵の本拠地に近づく事など、足が遅すぎて現実的ではない。 その空軍の主力となるのが戦闘機であり、何をするにもまず制空権を得る必要があります。制空権がないと、輸送機で歩兵や物資を速やかに最前線に運ぶ事ができないからです。 地球人類の歴史において、戦闘機の発展速度は非常に早く、世代が上の戦闘機に勝つのは至難の技でした―――過去形になりつつあるのは、戦闘機同士の1対1の能力がさほど重要視されなくなったためです。 上のレポートでも書きましたが、戦闘機単独がどんなに強かろうと、複数の敵が連携してMAP単位で戦力を展開されると、勝つ意味があんまりないんですな。戦いには勝利したアルフレット君ですが、単騎で動いてるという、普通はあり得ない状況であったため、せっかく勝ったのに敵地に侵攻できず、倒したハイレグ女(笑)を誘拐する事もできず、そのまま帰る事に。 …これ、投資した莫大な資金に対するリターンが少なすぎて、「戦闘には勝ったが戦争には負けた」という、リアルでもよくある典型例です。まぁ今回の場合、試験運用が主な目的だったので、その性能を確認できたのと、今後の課題が浮き彫りになったという点ではプラスだったのかもしれませんが。 (最後に行き着く先は近接コンバット) リアル世界の戦闘機は、「通信ネットワークを用いて、MAP単位で味方同士が繋がって広域監視網を構築し、その共有情報を用いて相手が見えない位置から超遠距離攻撃を行って一方的に倒す」方向に進んでます。 一方でファンタジー世界のルナルでは「射撃は《矢よけ》に封殺される」「《踊る武器》による誘導兵器は《高速飛行》で振り切られる」と、ことごとく遠距離攻撃を完封する軍拡競争の結果、「白兵武器で殴る」「近距離で抵抗魔法で制圧を試みる」という、ごく初期の歩兵戦闘の基礎に立ち返る結果となります。 「広域通信網」に関しては、地球と同じように有用ではありますが、遠距離攻撃が封殺されている関係上、情報の活用範囲はかなり制限されています―――ミサイルを撃ち込むのではなく、援軍を送るのが主体となるでしょう。 …これに近いのは、「機動戦士ガンダム」における「ミノフスキー粒子散布が当たり前になってレーダーの類が全く使えなくなり、有視界内戦闘を余儀なくされる」架空の環境かもしれません。しかもルナル世界の場合、ガンダム世界よりもさらに過酷な環境であり、そもそも射撃は全く意味をなさず、相手の反撃の危険を伴う白兵戦を行うしかありません。 この状況下で、相手を圧倒する新戦術を考案すると「一撃必殺の制圧系呪文をマンチキン上げする」「《透明》の呪文で相手から見えなくなって一方的に攻撃する」「《倍速》で相手の倍攻撃を繰り出して、相手の能動防御を強引に突破する飽和攻撃」という、ガープス黎明期に一世風靡したマンチキン戦術のいくつかが候補に挙がります。 しかし、「マンチキン上げ」は結局のところ相手の戦闘距離に入らざるを得ず、しかもカウンター的にしか使えない。「倍速で2倍殴る」戦術は短時間しか持たない上、疲労の蓄積が大きすぎるため、連戦ができない。そしてこれらに共通するのは、MAPレベルでの有用性が特にないという事。 結果、「透明状態を魔化アイテムで強引に維持する」戦術が無難という事になります。これは移動時も有効なため、MAP対応兵器としての有用性もあります。下手すると、リアル地球におけるステルス戦闘機よりも有用です…なんせ、本当に「相手の姿が目に見えない」んですから。しかもこれ、1歩兵の能力としても実装できるので、陸軍も大幅強化可能なんですよね。 …以上の話は、国家同士の軍拡競争の最前線の話なので、ゴブリンなど粗末な文明レベルの相手をする冒険者の場合、ここまで切り詰める必要はまずないと思います。もっと単純に《浮遊》で空に浮いて一方的に射撃呪文で対地攻撃するといった「対地攻撃ヘリ」戦術でも、現状のルナルでは十分有用な戦力です。上に書いたような洗練された戦術を駆使する戦闘など、冒険者が経験する事はほとんどないでしょう。 ただし、冒険者たちが例えばトルアドネス帝国と露骨に敵対した場合、冒険者たちが手強いと判断されると、終盤クエストの中ボスとして「帝国軍の誇るハイスペック飛空魔術師」とかが飛んでこないとも限りません。 「第13節 不落のファンタズム」に登場した主役「不落の戦術家」(350CP)も、実は今回の第5世代飛空兵を、「財産」ではなく大量のCPによるマンチキン上げで強引に実現したキャラクターです。アリサ・ランディールとの直接戦闘では勝ち目が低いですが、通常の飛空兵として見た場合、限界を大幅に突破した壊れ性能になっています(ダミー戦力として独立幻覚を使っている事も計算に入れるなら、ほぼ第6世代飛空兵と言っても過言ではない)。 《高速飛行》と《透明》をほぼ無制限に持続可能というだけでも、もう今回のレポートに登場した飛空兵から見れば完全にチートキャラであり、今回の主役であるアルフレット君が彼女とやり合っても、まず勝ち目はありません。 (アルフレットの改良点) まず、使用可能なエネルギー量が少なすぎるので、何とかしてパワーストーンの追加装備がしたいところです。現状のキャラクターシートでは、戦闘時に1回《高速飛行》を使っただけで拠点に帰る必要があり、継戦能力が低すぎます。 思いつく手としては、《忍び足》の魔化をすっぱり諦めて、浮いた財産($12,500)で代わりに《音噴射》を魔化($10,000)。これにより《発電L2》のパワーアシストを受けられるようになり、敵役のシリューと同じくパワーレベル4のソニックブレードを展開できるようになります。 《音噴射》を自力習得せずに済むので、浮いた5CPを使って「方向感覚」(5CP)の特徴を獲得し、〈身体感覚〉技能をもう少し実用レベルに上昇させます(+3)。 そして、差額の残り残高($2,500)で内蔵化されたパワーストーンを複数個購入し、《高速飛行》の連続使用を可能にするといった手が考えられます。 改造のデメリットとしては、レポートの最初の方に語られてるように《超音波視覚》に対するステルス性がなくなり、さらに〈忍び〉技能のボーナスもなくなる事から、最初の完全な奇襲が難しくなるといった点があります。今回は、ストーリー的に「エコー・ロケーションも封殺するべき」と結論付けられた設定になっていたため、ステルス性に偏重した設計になっていました。 (テレポート魔術師はダメなのか?) 飛行魔法の頂点にあるのが《瞬間移動》であり、これを使って空間跳躍する飛空兵が最強では?とか、管理人も最初は考えたのですが。 しかしガープスでは、どんだけ技能レベルを上げようと2%の確率で失敗します。これは、目標値16以上でもダイス目17と18は自動で失敗/ファンブル扱いだからです。 で、テレポートにおける失敗って、1差失敗で問答無用で1Dダメージを負った挙句に朦朧状態で目標座標に到着。ファンブルだと即死しない範囲でGMが選んだ面白い場所にどこでも強制転送…という、とんでもない事故につながります。 わずか2%の出来事とはいえ、これは無視できる数値ではありません。まして、テレポート戦闘だと一回で終わりではなく、何度も転送移動する事になりますから、確率の法則でいつか確定で酷い場所に転送されてしまいます。ただでさえ貴重な魔術師を、戦闘とかいうくだらない行為で喪失するのは、さすがにちょっと問題があり過ぎだと判断されるのではないかと。 あと、単純に転送コストが膨大すぎて、連続使用しようとするとマンチキン上げが必須になります。ノーコストで移動できるくらいじゃないと、さすがにちょっとこれをメイン移動手段に据えるのは現実的ではありません。 似たような問題は、古いTRPGシステムである「D&D」でも有名でして、魔法使いはテレポートの失敗が怖くて、テレポートじゃなくてディメンジョン・ドア(テレポート移動を行える扉を作成する)で移動するのが当たり前!…とかいう上級者の常識みたいなのがあったそうです。 D&Dの場合、どんだけ確率を上げても成功率95%だったため、失敗率5%はさすがに無視できなかったんですよね…失敗すると高度がランダムに変更され、高すぎると上空から落下死、低すぎると地面に埋まって即死!…と、テレポートなんか絶対に使いたくなくなる理由が満載していました(笑) (SAGA3 時空の覇者) シリューという名の女性が登場しましたが、これはかつてゲームボーイのソフトとして発売された「SAGA3 時空の覇者」に登場する4人の主人公の1人です。ゲーム内では「すきなじょせい」として登録され、名前を自由に決められます(デフォルトでは「シリュー」)。 固有のセリフが序盤にちょっとあるだけで、作品通してほとんどセリフがなく、どういう性格なのかはほとんど定まってません。ただ、当時のイラストでは印象的なハイレグアーマーを着用しており、すらっと背の高いマジメそうな武闘派の女性のイメージでした。見た目のエロさゆえか、主人公の中では一番人気があったというか、他が目立たない中、唯一目立ってたという感じです。 そして遥か未来、このシリーズはリメイクされたのですが、その時に全てのキャラクターのイラストが一新された結果、シリューは「どこにでもいるごく普通の金髪少女」に変更されてしまいます。「身長が高く体育会系の女性は不人気だから」とでも思ったのでしょうか。 ですが、当時と比べてあまりに地味で特徴のない美少女になってしまったため、ユーザーに見向きもされなくなります…いまだに原作のハイレグ少女のイラストの方が多く描かれていたりしますし。 メーカーもその不人気を認めたのか、別のソシャゲだか何だかでは、過去のハイレグ・シリューのイラストが実装される事に。 …そもそもキャラデザインを変える必要性なんぞなかったのになー?リメイクでいらん事して金を費やした挙句に嫌われて自爆するパターン、最近のスクエニの定番になりつつあるようですが。 GBのSAGAシリーズにおいて、最後の作品となった3ですが、人気としてはイマイチでした―――1と2の戦闘システムを継承せず、FF(ファイナルファンタジー)シリーズのシステムに移行してしまったこと、SAGA独自要素(ロボやモンスター)も簡略的に統合されてしまった事などから、SAGAシリーズの戦闘システムの「良さ」みたいなのが完全に喪失してしまったのが痛かった、というのが管理人個人の印象です。 ただ、主人公4人に見た目だけとはいえ個性を付与したのが3の唯一の独自性だったので、ここをもうちょっと拡張してもよかったかな?と思わなくもありません。初期のシリューは、ゲーム開始時に少しだけ恋人としてのイベントがあったので、その後のイベントも結構期待したんですけど、結局それ以降は何もなく残念でした。 そんな事情から、当時の思いをちょろっとでも形にしようと思い、登場させてみました。彼女のキャラクターシートも挙げておきます。 |
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【基本設定】 ゼクス共和国のエタンの民で、この国の特殊な仕事に携わっている女性です。あまりアルリアナ信者らしくない真面目な性格ですが、突っ走りやすいところ(「直情」)や恋人との恋愛に情熱を注ぐところ、エタンの根無し草的な気質などを総合すれば、十分にアルリアナ信徒と言えるでしょう。 彼女の「アルリアナ信徒にしてはかなりまとも」という部分が重宝された結果、天幕都市イーアに常駐する小規模魔術師団に特注して作られた高価な魔法の鎧を与えられる代わりに、ゼクスの空を守るようにアルリアナ神殿から使命を受けました。彼女は防空を担当するミュルーン傭兵たちと共に、国境付近の空を防衛する任に就いています。 【設計思想】 基本的には、レポートの主役であるアルフレットと似た設計になっています。 ただし、エコー・ロケーションに対するステルス性は考慮していないため、《忍び足》の代わりに《音噴射》が魔化されており、これが唯一の攻撃手段にもなっています。 あと、《韋駄天》がない分をシールドで補強しています。また、パワーストーンを豊富に所持しているため、ある程度は連戦が可能です。 彼女はエタンの民にはあまり似合わない高価な装備を持っていて、敵に奪われると損失が大きいという事情から、帝国領内に入っての偵察は行わず、ゼクス領内での防空に特化しています。 |